獅子家のメイド ページ3
目の前には月が居た。
私を、こんな私なんかを姉と慕ってくれる心優しい七歳の召使。
いって、私はこの家の三人のメイドの中で一番愚図で鈍間である。
「あら、月如何したの？」
月は自分の能力で寝室のドアを破壊していた。
「何度ノックしても御館様が起きられなくて」
「そっか」
私達は御館様の寝室を見た。
其処にはいつもの様に黒魔術に使うような頭蓋骨や並べられた蝋燭の数々。
何と、亡くなられた奥様の為なんだそう。
御館様はノーマルだ。
だが、ノーマルとは思えない程のカリスマ力や自営力で、獅子家を企業になられた。
けれど、奥様が亡くなられてから御館様は変わってしまったのである。
「ねぇ、御館様は生きてらっしゃるかな。」
「一寸確認してくるね」
私は月をそのまま寝室の前に待たせてパタパタと御館様のベットまで行く。
だが、矢張りそこには居られなかった。
矢張りと云うのは寝室の奥にはもう一つ部屋が有るからだ。奥様が無くなられてから御館様は殆どそこに引きこもってらっしゃる。
出てくるのは食事の時のみと云っても過言ではない。
「かぎ取ってくるか、月に頼もうかな」
月の異能「家具破壊」は異能を発動して家具に触るとその家具が後かたもなく無くなるという能力であるのだ。此の前教えてくれた。
「月ぃ！ 奥の部屋開けてくれない？」
私は寝室の外に居る月に聞こえる様に大きな声で呼びかける。
「はーい」
と腑抜けた声で帰ってきたが間違いなく月の物だ。
「此処を開ければいいの？」
直ぐ近くにあった声は私達が初めて会った時の物とは全く違ったもので少しびっくりしてしまった。
本当に月の物なのに。
ぐちゃ
「此処を開ければいいんだよね？
そう言う月君はナイフを持ちそのナイフは私の胸をえぐって居た。
「え？」
理解ができなかった。
私は倒れ御館様の寝室の一角に血だまりを創る。
月が最後に言った言葉は何だったのだろう。
私の異能は「リペア」。だが、人間は直せない。物しか直せない。
私の血だまりはどんどんと染みていく。
お掃除しなきゃ。
怒られちゃう。
夏樹お嬢様に怒られちゃう。
私の走馬燈は皮肉なものでずっと私が怒られているものだったのに最後の最後だけ私に笑顔を向けてくれる月だった。
「僕が、落ちこぼれの火美なんかを尊敬するわけないだろ。……ごめんね」
其の言葉は聞こえなかった。
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作者名：暁 抹茶 | 作者ホームページ：
作成日時：2018年7月26日 20時
