あの音をもう一度 (ページ9)

今日:50 hit、昨日:58 hit、合計:79,206 hit

9 ページ9

次の日の放課後、Aと愁の姿は桐先の弓道場にあった。

さすが名門・強豪校桐先、設備等は充実しているようだ。
そしてなによりその部員の多さに2人は驚いていた。

『弓道をしてる人がこんなにいるなんて...ここなら色んな人に出会えそう。』

Aは部活に励む先輩達を見ながら言う。

愁「あぁ、それにこれからは毎日Aと弓が引けるんだ。楽しみだよ。」

『うん、私も。あ、愁には負けないから！覚悟してよね！』

愁「へぇ〜、それは楽しみだ。」

2人は互いに見合いながらクスクスと笑う。

ある程度弓道部の見学を先輩から受けると、弓を実際に触らせてもらうことになった。

A達以外の見学者は初めて本物の弓を見るようで、様々な反応をしながら楽しそうに見ている。

『この弓、私達が使ってるのと少し違うね。』

愁「そうだね。弓も色々な種類がある、と西園寺先生が仰っていたよ。」

2人が弓について話していると、1人の男性が声をかけてきた。

「君たちは、もしかして経験者ですか？」

愁「はい。約2年ほど地元の教室に通っていました。」

「そうでしたか。あ、申し遅れましたが、僕は本村宏樹と申します。」

本村と名乗る彼は、くせ毛なのかくるんとした黒髪に眼鏡をかけている。

誰が見ても感じの良さそうな好青年。
それが2人から見た本村の印象だ。

愁「はじめまして。僕は藤原愁です。」

『五条Aです。よろしくお願いします、本村先輩。』

Aと愁も本村にならって挨拶をする。

宏「引いてみますか？」

本村は小学生から練習をしていたという2人の射が気になり、1本引いてみるかと尋ねる。

『いいんですか？』

宏「はい。僕もお2人の弓を引くところを見てみたいですし。弓と矢はこちらでお貸しします。弽は...」

愁「自分のがあるので大丈夫です。」

宏「わかりました。では準備が出来たら声をかけてください。」

そういうと本村は2人の弓と矢を用意するために離れていった。

2人とも制服のため、胸当てをし弽をつける。

『まさか弓が引けるなんて思ってなかった。こんな大勢の前で引くの初めてだから緊張するな。』

愁「でもおれ達の射を見てもらえるいい機会だ。西園寺先生の名に恥じないように頑張ろう。」

『うん。』

そういうと2人は立ち上がり、弽同士をコツンと合わせ互いの健闘を祈った。