あの音をもう一度 (ページ8)

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「暖かい春の日差しが降り注ぎ、木々や花々が色鮮やかな季節になりました。今日の日に新入生諸君を迎えられること、楽しみにしていました。」

桜が満開の中、桐先中学校では入学式が執り行われていた。

校長先生の新入生歓迎の挨拶の声が響き渡るなか、真新しい制服に袖を通したAは、1人の少年を探している。

だが座っているからか、新入生といっても沢山人がいてうまく探せずにいるらしい。

入学式が終わり、担任となる先生に先導されながらこれから自分達が過ごす教室に戻ってくる。

ひと通り担任から挨拶や学校についての説明が終わると、今日は解散となった。

どうやら部活動などは明日以降から見学などが始まるらしい。

Aは教室を見渡す。
学校初日だからだろう、まだ各々様子を伺っているような雰囲気だ。

愁「A、帰ろう。」

Aが他の生徒を観察していると、愁がいつの間にか鞄を持って目の前に立っていた。

『あ、うん。そうだ！同じクラスだから、毎日愁と顔を合わせられるね。』

入学式の体育館前に張り出されていた紙、偶然にもAと愁は同じクラスの欄に名前が書かれていたのだ。

愁「別に同じクラスじゃなくても、部活で会えるじゃないか。」

少し照れ隠しをしたような声色で愁が答える。

『そうだけど...それはそれ、これはこれなの！というわけで、これからもよろしくね、幼馴染みさん。』

そういってAが手を差し出すと、愁は力強くその手を取りAを椅子から立ち上がらせる。

愁「あぁ、こちらこそだ。」

愁はAに微笑みながらも、クラス分けの他クラスの欄にあった、"鳴宮湊" の3文字を頭に思い浮かべる。

愁(湊...君が桐先にいるということは、おれは期待してもいいんだよな？)

それはAも同じようで、また3人で弓が引けるかもしれない。
この約1年夢見てきたことが叶うかもしれない。

そんなことを思いながら愁と帰路につくのだった。