あの音をもう一度 (ページ23)

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4月。
県大会予選まであと1ヶ月少しとなり、桐先弓道部はさらに練習に力を入れていた。

そんな中でも休みはあるもので、Aは1人散歩をしている。

普段の休みは愁と過ごすことの多い彼女にとって、1人での外出は珍しい。

『久しぶりのゆっくりした1日ね。そうだ、確かこの道を登った先に神社があったはず。」

昔からあることは知っていたが、なかなか機会がなくて来れずにいたのだ。

10分ほど歩くと、目の前に赤い鳥居と長い階段が見えてきた。

『うわー、この階段地味に辛そう。』

そう言いながら1段1段登っていく。

登り終わるり森を抜けると、古い社が目に入ってきた。

「おや、こんなところに若人が。散歩かなにかかの。」

Aが声のする方へ振り向くと、人の良さそうな笑みを浮かべたおじいさんが立っていた。

『はい。前からこちらに来てみたくて。ちょうど時間があったので。』

「そうかそうか。たまにはリフレッシュもせんとな。すまん邪魔をしたの。ではわしはここで失礼するとしよう。』

『いえ。さようなら。』

おじいさんがいなくなると、さっき彼が歩いてきた方を見る。

どうやら奥にも何かあるらしく、道が続いていた。

『行ってみますか。』

少し歩くと大きな建物が見えてきた。
目線を左斜め先に向けると、見慣れた的と安土が見えている。

『夜多の森弓道場。』

弓道場の入り口に書いてある木の看板。

『こんなところに弓道場があったなんて知らなかった。』

Aは中が気になり扉に手をかける。
するとその時、後ろから懐かしい声がした。

静「A？」

『え、静弥？どうしてここに？』

互いにいるはずのない2人が出会ったことで、Aと静弥は驚いていた。

静「僕は、というか僕たちは部活の合宿中。うちのコーチがここの神主で、特別に使わせてもらってるんだ。」

『あれ、風舞って弓道部がないって静弥言ってなかった？』

静「今までは人がいなくて休部状態だったみたい。今年からは顧問とコーチもついて再開した。今は男女合わせて8人かな。」

『そうだったんだね。』

静弥が弓道部ということは、彼もいるのだろうか。

静「湊もいる。まだ早気は完全にはなおってないけど。」

Aの心を読んだかのように、静弥が答える。

『そっか、湊が弓を続けてるならよかった。きっと愁も喜ぶ。』