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Aと入れ替わるように準備をした愁、湊、静弥の3人は軽く円陣を組む。
湊「静弥、愁。勝って全国にこのメンバーで行こう。」
静「うん。僕も2人の足を引っ張らないように頑張るよ。」
愁は湊を見る。
自分は湊がいればどこまでもいける、そんな気持ちで。
結果、男子も予選を通過し決勝トーナメントに駒を進めることになる。
そしてこの男子団体戦の予選で、1人の少年が話題になっていた。
桐先中学の鳴宮湊。
湊は予選団体戦で愁に続き全射皆中をしていたのだ。
そのため個人戦では特に目立つことなかった湊に、"あの桐先の大前は誰だ"と注目の的となっていたのだ。
『全射皆中なんて、湊にもついに弓の神様が微笑んだのかな?』
試合の帰り道、Aたち4人は迎えの車の中で湊の話でもちきりだ。
湊「なんだろう、外す気がしなかったというか。なんというか...。」
静「後ろから引いてるところを見てたけど、今日の湊の背中はすごくカッコよかったよ。」
『うん。応援席側からも、"あの大前の鳴宮ってやつすげーな"って聞こえてきたよ。』
湊「いや、でもまだ決勝トーナメントもあるし。それに愁は個人戦から全射中ててる。俺はまだまだよ。」
湊は褒められることになれてないのか、照れながらも決勝トーナメントに向けて気持ちを入れ替える。
愁「決勝トーナメントは西園寺先生も来てくださる予定だからね。いい射を見せれるようにしないと。」
静「愁はこれまで全射皆中。周りから貴公子なんて名前も付いてるのに、まだまだ物足りないって感じだね。」
静弥は愁の弓に対する想いを知ってか知らずか、
愁にさらにその上を目指すことに対しての問いを含めた言葉で返す。
愁「あぁ、俗称を付けられようが関係ないさ。自分が納得できなければ全射皆中したって意味がない。」
『正射必中の先に何があるのか。これは私も気になる。』
的に中てるために正しい射法を身につける。
それは一筋縄ではいかない探求への道。
弓引きでいる限り、きっとその道は続く。
だがその探求の先にある何かを見つけることができれば、自分の見たい高みがあるはず。
そしてその高みにいくには...。
愁(湊、やっぱり俺には湊が必要みたいだ。)
愁にとって湊の存在はどれほどのものなのだろう。
Aは湊を見つめる愁の横顔を見ながら、心の中で思うのだった。
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作者名:希子 | 作成日時:2023年2月1日 13時