Episode 35 ページ38
全員が車から降りた。
男のそばに駆け寄り、状態を確認する。
「おいおい、溺れ死んでるぜ!!」
その異様な死に方に、承太郎が珍しく驚きの声を上げる。
片方の男の口の中は、比喩するならば「湯船」。そのくらい、水が溜まっているのだ。
その近くには、水筒が転がっている。
突然、ズキッと痛みが頭に走る。側頭葉の酷い痛みに、思わず手で押さえてしまう。
何かが脳内で疼いている。
また、記憶が戻ろうとしてるのだ。
一生懸命思い出そうと、目を瞑り、頭を抱える。
あぁ、あとすこしなのにっ……!!
Aが頭を悩ませている間、ジョースターがまだ息のあるもう一人の男の口に、水筒を近づけた。
すると、男はどんどん呼吸を乱し、最後にこう叫んだ。
「うわぁあああ!!違うッ!水が襲ってくるゥゥッ!!」
突然の悲鳴に、Aの集中力も散漫になってしまった。その代わり、意識は男へと完全に移った。
その瞬間だった。
水筒から出てきた“液状の何か”は叫んだ男に襲いかかる。本当に液状なのかを疑うくらい、その威力は常軌を逸していた。
すぐさま手のような形を作り、男の顔を掴む。そしてそのまま引きちぎり、水筒の中へと引きずり込む。
首から噴水の如く、血が舞った。
頭のなくなった体は、その場に力なく倒れ込んだ。
あまりの無残な光景に、Aは一瞬意識を手放しかける。
「て、敵スタンドじゃ!!」
その場の全員は、現場からすぐに飛び散る。
十メートルほど距離を取り、安全を確保する。
承太郎がスタープラチナと双眼鏡を使い、辺りを見渡す。しかし、本体は見つからない。
Aは花京院の隣でうずくまる。
こちらから見えていないだけで、本体から監視されているのかもしれない、と考えて。
すると、花京院は隣にいるポルナレフに話しかける。
「おいポルナレフ。あの水筒を攻撃しろ」
「えっ俺がか?!あ、あの小さな水筒の中に、パイロットよ頭がまるまる引きずり込まれたんだぜ?!」
そうだ。あの一瞬の間に、そんなことがあったんだ。
冷静に考えてみれば、発狂してもおかしくない状況に何度も出くわしているのだ。それなのに、どうしてこんなにも叫ばず、平静を装っていられるのだろう。
驚いてもいる。人の死が何度も訪れることに。
悲しんでいる。人の命の灯火が消えることに。
それなのに、どうして私は平然としていられるのだろう。
自分の異常な冷静さに、静かな怒りを覚えた。
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東雲(プロフ) - 海守青空別垢さん» 応援ありがとうございます!頑張ります(*^^*) (2018年9月15日 0時) (レス) id: cea307c8ed (このIDを非表示/違反報告)
海守青空別垢 - 頑張ってください!(^^) (2018年9月14日 21時) (レス) id: b3f5a03222 (このIDを非表示/違反報告)
東雲(プロフ) - 海守青空別垢さん» わあああい!!ありがとうございます!嬉しいお言葉頂きました!これからも何卒宜しく御願い致します(´ー`*) (2018年9月3日 14時) (レス) id: cea307c8ed (このIDを非表示/違反報告)
海守青空別垢 - この作品大好きです!僕もこんな神作書いてみたい(´・_・`) (2018年9月3日 10時) (レス) id: b3f5a03222 (このIDを非表示/違反報告)
東雲(プロフ) - もちこさん» コメントありがとうございます!そんな勿体ないお言葉を……!ありがとうございます、励みになります( ^P^) (2018年8月27日 22時) (レス) id: cea307c8ed (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:東雲 | 作成日時:2018年2月6日 19時