Episode 19 ページ22
「だだだだいじょうぶでずよ!お気になしゃらず!!」
無理矢理笑顔を作り、両手を顔の前で振る。
左右にいる高校生二人が学ランを貸そうとしていることを悟り、Aは必死に誤魔化した。
しかし、声と体、共にこれでもかというくらいに震えているため、誤魔化すもクソもヘッタクレもない。
まるでバイブレーションだな…はは…
笑顔の反面、心の中では自虐が止まなかった。
どんなに笑っても、二人の視線は先程と全く変わらない。
誤魔化しが意味を成さないと分かると、段々と乾いた笑い声へ変わっていき、とうとう笑っているのかすら分からないものになった。
「大丈夫かぁ?俺、これしか着てないから貸せるものないぜ?」
助手席のポルナレフまでもが後部座席に振り向き、心配そうな視線を送ってくる。
__心配しないでくれー…!!
心の中で叫ぶAをよそに、三人は会話を続ける。
「なぁ、花京院、承太郎。俺の代わりにお前らの学ラン貸してやってくれよー」
「僕も考えていたところだ。なぁ承太郎」
「一つ飛んで右に同じく、だな」
みんなの良心が痛いです…
ついでに視線も痛いです…
「ほ、本当に大丈夫ですよ!!気を遣わ…っくしゅんっ!」
「おいおい…本当に大丈夫なのか…?」
最悪のタイミングで訪れるくしゃみ。
そのくしゃみが更に三人の心配の色を濃くする。
普段クールな承太郎でさえ、心配そうな表情を隠しきれていない。
花京院がAの額に手を当てる。
今までずっと温めていた彼の手は、ほんのりと暖かかった。
手を離した花京院は「熱はないな…」と呟く。
「そんな意固地にならなくていいんだぜ?レディなんだしさ!」
ポルナレフは、いつもの人懐っこい笑顔でAに言い聞かせる。
「本当に、大丈夫ですよ…」
目尻に溜まった涙を隠すため、思わず俯いてしまう。
__今まで周りから、こんなに大切にされたことがあっただろうか。
冷えきっていた体がじわじわと暖かくなっていくのを感じる。
皆の優しさに包まれて、確かに胸の奥が暖まっていた。
目の前にいるポルナレフ、左隣にいる承太郎、右隣にいる花京院に、ぼそぼそと「わし運転中じゃからなぁ」とぼやくジョースター。
自分は、この人たちを支えなければならないのに。
今、私は全力で支えられているのだ。
今、弱音を吐いている場合ではない。
もっとキッパリ断ろう!
決意を固めたAが、自分の拳を見つめていた顔を上げた。
132人がお気に入り
「オリジナル」関連の作品
この作品を含むプレイリスト ( リスト作成 )
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
東雲(プロフ) - 海守青空別垢さん» 応援ありがとうございます!頑張ります(*^^*) (2018年9月15日 0時) (レス) id: cea307c8ed (このIDを非表示/違反報告)
海守青空別垢 - 頑張ってください!(^^) (2018年9月14日 21時) (レス) id: b3f5a03222 (このIDを非表示/違反報告)
東雲(プロフ) - 海守青空別垢さん» わあああい!!ありがとうございます!嬉しいお言葉頂きました!これからも何卒宜しく御願い致します(´ー`*) (2018年9月3日 14時) (レス) id: cea307c8ed (このIDを非表示/違反報告)
海守青空別垢 - この作品大好きです!僕もこんな神作書いてみたい(´・_・`) (2018年9月3日 10時) (レス) id: b3f5a03222 (このIDを非表示/違反報告)
東雲(プロフ) - もちこさん» コメントありがとうございます!そんな勿体ないお言葉を……!ありがとうございます、励みになります( ^P^) (2018年8月27日 22時) (レス) id: cea307c8ed (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:東雲 | 作成日時:2018年2月6日 19時