思い出【卒業式編】（4） ページ34
制服を着たまま再度家を出る。
卒業式の為につけた胸の花もそのままに。
電車に揺られながら、数回しか行ったことがない亮平くんの実家を必死に思い出し、彼の家に向かう。
彼の家の最寄り駅に着くと次第に高まる胸の鼓動。
亮平くんの家に着いて、腕時計を確認すると8時10分。
もう何度もかけた亮平くんの電話番号を少しゆっくり押す。
スマホの普及がそれほど広まってない2012年の3月。LINEなんてものはもちろんやっていなかった。
通話ボタンを押して耳に当てると心地よいコール音が2、3回流れた後に、これまた心地よい亮平くんの声が聞こえる。
緑｢あ、A？｣
｢うん！今、家の前に着いたよ！｣
緑｢了解！すぐ出るね！｣
そう言って電話を切って、すぐ目の前の家の玄関がゆっくり開く。そこから見慣れた制服に身を包む亮平くんが顔を覗かす。
亮平くんはゆっくりとこちらに歩いてきて、家の門を開ける。
緑｢わざわざごめん｣
｢んーん、全然大丈夫！それよりなんで制服なの？レッスンじゃなかったの？｣
緑｢せっかくAと会うなら制服がいいなと思って！もうこれ着るの最後だし｣
そう言って照れたように、私と同じ位置にある胸の花を撫でる。
緑｢これ｣
そう無造作に差し出されたその手に握られていたのは、少しくすんだボタン。
私はゆっくりと彼の学ランのボタンへと目線を移す。
上から綺麗に並んでいたボタンが、途中で抜けている。
上から2つ目のボタンが見当たらず、彼の手の中にコロンと転がっていた。
｢第二ボタン…くれるの？｣
緑｢え、もらってくれないの？｣
｢私でいいの？｣
緑｢Aじゃないとダメなんだけど｣
照れくさそうに俯く彼の手から第二ボタンを拾い上げる。
なんてことないただのボタン。だけど、私にとっては嬉しくてたまらない世界でたった1つのボタン。
無くさないようにとギュッと握りしめる。
亮平くんと少し立ち話をしていると、亮平くんの背後の玄関が開く。
緑｢え！！お母さん…｣
母｢何してるの？ごはん食べないの？｣
初対面の亮平くん母。
まさかの登場に私よりも彼の方がテンパていた。
母｢…あら？どちら様？｣
亮平くんによく似た顔で、私を見て首を傾げる亮平くんのお母さん。
緑｢あ、えっと…｣
困った顔でこちらを1回見て、観念したように俺の彼女と私を少し前に出す。
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廉樹(プロフ) - Sayukiさん» 貴重な意見ありがとうございます！続編の方で書かせてもらいます！ (2020年6月14日 10時) (
レス) id: 64321f42bc (このIDを非表示/違反報告)
Sayuki(プロフ) - いつかできたらでいいので裏も入れて欲しいです (2020年6月10日 1時) (レス) id: a707041684 (このIDを非表示/違反報告)
ゆきの - 阿部担ですが、阿部ちゃんが阿部ちゃん過ぎて、そしてとてもお似合いで、こんな彼女ならいてもいいなって思っちゃいました(笑 元気貰ってます。これからも更新楽しみにしてますね。 (2020年4月17日 18時) (レス) id: 76e9874d53 (このIDを非表示/違反報告)
廉樹(プロフ) - 佐々木さん» 嬉しいです！ぜひお願いします！ (2020年4月15日 11時) (レス) id: 64321f42bc (このIDを非表示/違反報告)
佐々木(プロフ) - 廉樹さん» 私は今Twitterでおすすめの作品を紹介させていただいています。そこで「阿部と彼女」を紹介してもいいですか？ (2020年4月15日 8時) (レス) id: e312adaa83 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：廉樹
| 作成日時：2020年4月8日 11時
