思い出【卒業式編】(3) ページ33
なんとなく会話が途切れてしまった。
でも、なんとしても伝えたくて、前を歩く亮平くんに聞こえるか聞こえないか程度の声で
「出会えてよかったよ」なんて言ってみる。
もう体育館が目の前で亮平くんには聞こえてるかは定かでないけれど、真っ赤になった耳は私の言葉でだと思っていいのかな。なんて。
・
ふっとそこで現実へ戻る。
スマホのロック画面には数分前にきたメッセージが表示されていた。
阿部:急だね笑
阿部:どうしたの?これ笑
A:ちょっと思い出に浸ってる
阿部:相当暇な事だけはよく分かったわ笑
A:ご名答!
びっくりするほどあっさりした内容。
トキメキポイントなんてあったもんじゃない。
卒業式の後はあんなにもときめいたのにな、なんてまたしても思い出の渦に飲まれていく。
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亮平くんは私に宣言した通り、式が終わると仲のいい男子友達とだけ写真を撮ってすぐに教室を出る。
最後のホームルームでは、担任もクラスみんなも涙が止まらない様子だった。もちろん亮平くんも例外ではなく、珍しく充血した目で、仕事場へと消えていった。
友「あれ?阿部ちゃんは?」
クラスの子はもちろん、他クラスの子や後輩の子達も亮平くんとの写真を求め、亮平くんを探す。
そんな事も鈍感で自分はモテてないと自虐してる亮平くんは知らないんだろうな。
亮平くんと写真を撮りたい人、ボタンをもらいたい人なんていっぱい居る事を。
だけど本人には伝えない。ちょっと悲しくなっちゃうから。
「あ、さっき帰ってたよ」
友「え〜、ざんねん!第二ボタンとかもらいたかったな」
「…え?!好きだったの?」
友「まぁありかな程度!そんなに好きってことでもないけど、もし有名になったらなんか宝物になりそうじゃん笑」
そんな事を軽く言う友達に私は苦笑い。
世間は必ずしも優しくない。それを痛感してしまう。
クラスメイトや他クラスの仲がいい子、部活にも顔を出して、沢山写真を撮る。
校門を出る頃には後輩からもらった花束やプレゼントで両手がふさがってしまった。
後ろ髪を引かれるような思いで校舎を去る。
仲のいいグループの人達と笑顔で。
家に着いて、たくさんの花束を花瓶へと移し替え、卒業に浸っているとあっという間に時計の針は7時半をさす。
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廉樹(プロフ) - Sayukiさん» 貴重な意見ありがとうございます!続編の方で書かせてもらいます! (2020年6月14日 10時) (レス) id: 64321f42bc (このIDを非表示/違反報告)
Sayuki(プロフ) - いつかできたらでいいので裏も入れて欲しいです (2020年6月10日 1時) (レス) id: a707041684 (このIDを非表示/違反報告)
ゆきの - 阿部担ですが、阿部ちゃんが阿部ちゃん過ぎて、そしてとてもお似合いで、こんな彼女ならいてもいいなって思っちゃいました(笑 元気貰ってます。これからも更新楽しみにしてますね。 (2020年4月17日 18時) (レス) id: 76e9874d53 (このIDを非表示/違反報告)
廉樹(プロフ) - 佐々木さん» 嬉しいです!ぜひお願いします! (2020年4月15日 11時) (レス) id: 64321f42bc (このIDを非表示/違反報告)
佐々木(プロフ) - 廉樹さん» 私は今Twitterでおすすめの作品を紹介させていただいています。そこで「阿部と彼女」を紹介してもいいですか? (2020年4月15日 8時) (レス) id: e312adaa83 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:廉樹 | 作成日時:2020年4月8日 11時