思い出【卒業式編】（1） ページ31
You side
｢暇だ…｣
そう呟いて部屋の天井を見上げる昼下がり。
今日でもう3回目。
ゴールデンウィークの今は在宅ワークもお休み。
仕事もなければ、外出もダメ。一人暮らしは暇でしょうがない。
天井を見つめていた目をゆっくりと下げる。
そして、その目線はクローゼットでピタリと止まる。
｢そうだ｣
ソファに沈めていた身体を起き上がらせて、クローゼットに一直線。
クローゼットを開けて、奥深くに眠っている卒業アルバムを引っ張り出す。
少しホコリを被ったそれは、瞬く間に私を淡い青春時代へと誘う。
ケースから滑り出し、表紙をめくる。
もうリズムも覚えていない校歌と、卒業アルバムでしか見た事のない学校の上空写真。
そんなものでさえ、なんだか心が暖かくなる。
パラパラとページをめくっていくと、パサッと何かが床に舞い落ちる。
それをそっと手に取って、裏返す。
その途端、頬が緩むのが自分でも分かった。
それをパシャリと写真に収めて、急いでLINEを開く。もちろん相手は亮平くん。
A：写真を送信しました。
A：これ懐かしいよね
それだけ送ると、スマホを閉じてもう一度それに目を落とす。
卒業式当日の光景が鮮明に思い浮かぶ。
・
笑顔で溢れる教室。
3年間ですっかりくたびれた制服の胸には見慣れない花が咲き誇る。
見慣れた、着慣れたはずの制服がなんだかとても特別なものに思えてしまう。
いつもは深緑で何の面白みのない黒板に、今日は色とりどりなチョークで華やかさがプラスされる。
わけの分からない数式も、くせのある英文も、そこにはない。
｢卒業おめでとう｣
その文字が、太くそして大きく黒板に横たわり、私たちに微笑みかけているようだ。
恋人の贔屓目なのか、はたまたジャニーズという肩書きなのか、私より早く教室に入り、クラスメイトに溶け込む亮平くんは、いつもの数倍輝いて見えた。
友｢A！｣
いつもより色めきだっている教室を廊下から眺めていると、仲のいい友人グループが手招きをする。
｢おはよう！｣
その声に引っ張られるように教室へと足を進める。
クラスメイト全員が揃う最後の日。
自然と軽くなる足。自然とあがる頬。
走馬灯のように3年間が頭を駆け巡る。
友人グループに合流する前にチラッと盗み見た亮平くんとバチッと目が合う。
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廉樹(プロフ) - Sayukiさん» 貴重な意見ありがとうございます！続編の方で書かせてもらいます！ (2020年6月14日 10時) (
レス) id: 64321f42bc (このIDを非表示/違反報告)
Sayuki(プロフ) - いつかできたらでいいので裏も入れて欲しいです (2020年6月10日 1時) (レス) id: a707041684 (このIDを非表示/違反報告)
ゆきの - 阿部担ですが、阿部ちゃんが阿部ちゃん過ぎて、そしてとてもお似合いで、こんな彼女ならいてもいいなって思っちゃいました(笑 元気貰ってます。これからも更新楽しみにしてますね。 (2020年4月17日 18時) (レス) id: 76e9874d53 (このIDを非表示/違反報告)
廉樹(プロフ) - 佐々木さん» 嬉しいです！ぜひお願いします！ (2020年4月15日 11時) (レス) id: 64321f42bc (このIDを非表示/違反報告)
佐々木(プロフ) - 廉樹さん» 私は今Twitterでおすすめの作品を紹介させていただいています。そこで「阿部と彼女」を紹介してもいいですか？ (2020年4月15日 8時) (レス) id: e312adaa83 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：廉樹
| 作成日時：2020年4月8日 11時
