阿部と彼女2

至れり尽くせり（1） ページ10

You side







今日は10日ぶりに亮平くんに会う予定だったが、休日出勤を命じられた。


感染症の影響で休校措置が取られたため、有給を使う人が続出。
絶賛人手不足というわけだ。



朝一番で部長から連絡が入り、目覚めの悪い朝になってしまった。



急いで準備をして、駅に向かいながら亮平くんに電話をかける。



｢もしもし｣

緑｢もしもし、どうしたの？｣

｢朝早くからごめんね。今日、会えなくなっちゃった｣

緑｢え、なんで？｣

｢休日出勤。朝部長から連絡きて。｣

緑｢そっか…分かった。気をつけてね｣



どこか寂しそうな声。
だけど、誰もが大変な時期だからと自分を鼓舞して改札をくぐる。



しっかりフルタイムで働き、ヘトヘトの状態で会社を出ると見覚えのあるシルエットが。



ここはオフィス街。確かに休日の今日はあまり人通りがなく、通ってもおじさんばかり。しかも3月頭でも6時を回ると辺りは真っ暗だが……



さすがに目立つ！！！



びっくりして急いで駆け寄る

｢ちょっと！何してんの？！｣

緑｢あ、お疲れ様。聞いてた定時の時間より遅かったから、会社の場所間違えたかと思った｣


と彼は能天気に笑う。



彼が私の会社に来るのははじめて。もしもの為に一度住所は教えた事があったのだが…


｢いや、そうじゃない｣

緑｢え、なに？｣

｢来たらダメでしょ！ファンの人にバレたらどうするの？｣

緑｢バレないよ。てか、こんな休日の真っ暗なオフィス街誰も通らないよ｣



休日の今日は電気の付いてないビルが多く、いつもより暗い。



｢それでもダメだよ！｣

緑｢どうしても会いたかったんだよ｣



公共の場でアイドルの口から会いたかったと言われ、私が冷や汗をかく。



｢それはありがとう。けど、会いたいなら言ってくれれば家に言ったのに｣

緑｢サプライズ！夢だったんだよね！彼女の帰りを会社前で待つの！！｣



暗くて顔はよく見えないが、何だか楽しそうなのは伝わる。

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