阿部と彼女3

結婚（2） ページ43

今年の春にはグループ初の4大ドームツアーが開催される事が決定。

個々でも活躍中の場が多くなり、地上波での冠番組も2つもある。


たかが1人の結婚とは言っても、やはりグループの流れを変える大きな出来事には変わりない。




長い沈黙が楽屋を包む。

その沈黙を破ったのは翔太。


青｢俺はいいと思う。阿部ちゃんは浮いた噂も今まで一度もないし、Aちゃんの事も俺らはよく知ってる。今が売れ時ではあるけど、今が結婚に踏み切るタイミングでもあるとは思う｣



綺麗事や嘘は言わない翔太だからこそ、その言葉は俺の心に染みて、目頭が熱くなる。



桃｢まぁ、阿部ちゃんとAちゃんを知ってたら反対はできないよね｣


佐久間のその声に全員が頷く。

安堵と嬉しさとメンバーの優しさが心に染みて、緊張ではなく、声が震えた。


緑｢…ありがとう｣


湿気を帯びたその声に泣くなよと茶化してくるメンバーは、笑顔の裏に何か覚悟を決めたような表情。


そうだよな。これは俺だけの問題じゃない。

本当はこんなに簡単に出せる答えじゃない事くらい分かる。


それでも、すんなり認めてくれたのはこのメンバーだから。



緑｢俺、今まで以上に頑張るから｣

紫｢当たり前だろ笑｣


メンバーの優しい笑顔に俺はこれまでもこれからも何度も救われるのだろう。







事務所との話し合いはメンバーほどすんなりと行かなくて、反対もされた。


それでも俺の気持ちは既に固まっていて、メンバーの後押しもある。


何ヶ月もかけて事務所を説得し、今日やっと事務所が認めてくれた。





メンバーに話してから8ヶ月も経っていた。




｢おかえり｣

緑｢うん、ただいま｣



同棲をし始めて毎日Aがいる家に帰ってこれる事が何より幸せ。



｢今度の記念日どうする？｣


ごはんの時にそうAから言われる。


緑｢ちょっといいディナーとか行く？｣

｢仕事じゃないの？｣

緑｢7時には終わる予定｣

｢なら、いいところで食べよ！｣



楽しみだな〜と笑うAは本当に35歳？というほど可愛い。

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