104話 ページ15
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翌日の休校の日。
私は雄英体育祭の結果報告も兼ねて、母の病院へ見舞いに来ていた。
いつもの見知った看護婦さんに面会の許可を貰い、母の病室へ足を運ぶ。
ん？あれ……？あの後ろ姿は……
『轟くん？』
「………………雷風、なんでお前……」
『えっと……ここ、私のお母さんの病室』
そう言って轟くんの立つ病室と斜めに位置している病室を指さす。
すると納得したように「……ああ」とだけ呟いて俯いてしまった。
『…………轟くんもお見舞い？』
コクリと頷く(可愛い)。
『………………怖い？』
「……ああ」
視線を斜め下に落とした轟くんはどうやら病室に入る勇気がないらしい。
『お母さん？』
「ああ」
『そっかそっか』
「……会ってもいいのか、自信がねえ」
『……うん』
「母さんはきっと、親父に……俺に囚われてる」
『……うん』
「…………でも、だから、この体で全力で、再びヒーローを目指すには会って話をしなきゃなんねえ」
『そっか……』
ふと轟くんの拳を見ると怯えているかのように小さく震えていた。
安心させてあげられるように……とその拳にそっと手を重ねる。
「！」
『私もね、初めてお母さんの病室入る時怖かったんだ』
「……」
『ずっと目を閉じたままで、本当に生きているのかわからなくて、すごく怖かった。
お母さんを見るのが、怖かったんだ』
今でも、そうだけど。
『でも……お母さんの顔はとっても穏やかだった。
力のなかった私を庇って傷ついてしまったから、苦しい顔してるかもしれないし、怒ったような顔してるかもって思ったけど……
目を閉じてうっすらと微笑みの浮かべた、ご飯できたよって呼んでるときの、いつもの優しいお母さんの顔だったんだ』
轟くんは黙って私の顔を見つめている。
『優しい轟くんのお母さんが優しくないわけないよ。きっと受け入れてくれる。
私のお母さんだって、言葉はなくとも受け入れてくれたんだと思うから。
母親はね、そう簡単に子どものことを切り捨てられないもんなんだよ』
じゃなかったら……お母さんは身を呈して私を………………。
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作者名：オクラ | 作成日時：2019年7月12日 8時
