98話 ページ9
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轟 side
服を新調してもらい、観客席に向かう。
勿論、雷風の試合を見るためだ。
「お、轟おつかれさん」
「轟くん！」
瀬呂と緑谷に声をかけられて、緑谷の隣に腰かける。
「さっき……Aちゃん様子が変だったんだ」
「？」
「なんだか……酷く落ち着いていた？……というかなんというか」
？？どういうことだ？
「塩崎茨 VS 雷風A！！
レディイィイイイィイイ……スタート！！！」
闘技台にいる雷風に視線を移すと確かにいつもと纏っている雰囲気が違った。
その表情はまるで1回戦目の俺のソレと同じだ。
この短時間の間になにがあった？？
おもむろに、雷風が右手を上げ、塩崎の方に向ける。
「やっべ！！あいつ、アレやる気だ！！」
「は？！まじかよ？！」
上鳴と瀬呂が慌てはじめた。
「アレってなんだ」
「見てたらわかるぜ！！轟、お前氷張れるなら張っとけ！」
「？？……おう」
答えになっていない答えを返され、不思議に思いながら痛くない程度に自身に薄く氷を張らせる。
なんなんだ、一体。
すると、静かに、ポツリと雷風は呟いた。
『【雷龍】』
途端、雷風の右手から龍の形をした雷がうねりながら塩崎の方へ向かう。
塩崎は上鳴との試合の時のように茨で食い止めようとするが、その龍は茨を切り裂きながら塩崎の方へと進んでいく。
そのまま塩崎を咥え、場外へと押しやった。
瞬殺だ。
雷風はその場から1歩も動いていなかった。
「塩崎さん場外！！
雷風さん、準決勝進出！！！」
『……』
いつものアイツからは想像もつかないような、冷たい表情。
そして、あいつの放った龍の影響で会場全体が少しビリビリとしていた。
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作者名：オクラ | 作成日時：2019年7月12日 8時
