田村(妹)は須貝担！(sgi)

妹の本心 ページ38

Aside

『私があの時本当に許せなかったのは…自分自身だから』


兄「え？」


『兄さんくらい優秀な成績が残せなかった自分自身だよ。【田村の妹】って言われても、【田村兄妹のできない方】って言われても…言い返せるくらいの強みがなかった自分が、1番嫌いで憎かった』


兄「それだって、俺がいなければ言われることはなかっただろ？」


『たしかにそうかもしれないけど…私は兄さんの妹でいれて幸せだよ。それに…私が落ちこぼれだったから須貝さんとも出会えたんだと思うし』


役得だね、なんて言って笑うと兄さんは少し悲しそうに微笑んだ。その顔は相変わらず綺麗で、「貴公子」なんて呼ばれるのもわかるなぁとぼんやり思った。


兄「ずっと、お前は悪くないって言いたかった。でも…できなかった」


『？？…なんで？』


兄「『じゃあ誰が悪いの？』って聞かれるのが怖かったんだと思う。あの頃の俺には『悪いのはお前じゃなくて俺だ』って言う勇気はなかった」


『…ふふっ』


兄「？？」


『私が悪くないんだとしたら、兄さんだって悪くないよ。それに…』


兄「それに？」


『私は兄さんを超えたくてずっと頑張ってきた。生まれた時からずっと数歩先にいる兄さんは私の目標だった。恥ずかしくて言えなかったけどさ…私の初恋って、兄さんなんだよ』


これは事実だ。物知りで優しくて誰よりもかっこいい兄さん。そんな人が小さい時から身近にいたら他の人なんて正直目に入らなかった。


兄「そっか。…………そっかぁ」


目元を手で覆い俯く兄さん。泣いてるのかな。


『兄さん…？』


兄「ずっと、恨まれてると思ってた。俺が兄であることも、お前が苦しんでる時に救ってやれなかったことも」


『……人間ってめんどくさい生き物だよね』

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