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河村side
ﾌﾟﾙﾙﾙﾙﾙ……ﾌﾟﾙﾙﾙﾙﾙ……
伊「あ……すみません。ちょっと席外します」
伊沢はスマホ画面を確認すると電話に出るため部屋を出て行った。チラッと見えたけど画面には「川上 拓朗」の文字。十中八九Aのことだろう。
須「河村さん」
河「なんですか？」
須「これ、Aちゃんに渡しといてもらっていい？」
須貝さんの手にはさっきも出てきたギター。一応修理が終わったら連絡を貰うことになっていたが、病院にいた時マナーモードにしてたから気づけなかったのかもしれない。
河「ありがとうございます。必ず届けます」
須「……ごめんな」
河「それも、Aに伝えときます」
須「Aちゃんにもだけどさ、君らにも」
河「え？」
どういうことだろう。僕らは何もしてない。いや、何もしてないと言ったら語弊があるくらいにはオフィスを引っ掻き回しはしたが。
須「研究を生業にする身でありながら先入観に囚われすぎてた。真実を追求しようとしなかった自分が情けないよ。だからごめん」
河「……僕らは何もしてませんよ。僕らはただ、あの姉弟に幸せになって欲しかっただけですから」
そうだ。あいつらさえ幸せであればそれでいい。これから先、いままで苦しんだ分まで幸せになって欲しい。僕らの知らない、知り得ないところで。
伊「河村さん、ちょっといいですか？」
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作者名：雪音 | 作成日時：2021年1月17日 19時
