n回目のI love you(fkr) (ページ22)

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河村side

久しぶりに、昔の夢を見た。

僕がヴィオレッタと出会ったのは彼女が路上で弾き語りをしていた時だった。

その時の僕は精神的にもキツい時期で、その日も死ぬことばかり考えていた。どこで死ねば誰にも迷惑かけずに逝けるのか、そんなことを考えながらフラフラ歩いていた時、彼女の声を聞いた。

彼女の声は不思議だった。無垢でありながら闇深く、引き込まれた。気づけば彼女の前で足が止まっていて、耳は響いてくる声とギターの音にだけ集中していた。

しばらくすると曲は終わり、あたりは小さな拍手で包まれた。彼女は恥ずかしそうに笑い、手に持っていたギターをしまう。

河「あの、貴方の名前は……」

弾き語りなんて次いつどこでやるかわからない。名前を知らなければもうこの声に一生会えないような気がして、思わず声をかけた。おかしいよね、今から死のうとしてたのに。

『ヴィオレッタ、と申します』

彼女はふわりと微笑んで僕の問いに答えを告げる。周囲からはアンコールの声が聞こえた。

『アンコールですか……ありがたい限りです』

彼女はしまいかけていたギターをもう一度取り出し、弦に指を這わせる。周りから歓声が上がると彼女は静かに言った。

『ご声援に、心より感謝を』

それが、ヴィオレッタとの出会い。そして、僕がヴィオレッタのファンになった瞬間だった。