12 ページ12
Aside
『ふくらさぁ……ん』
ふ「なに？」
『これ、頼まれてた書類です。提出遅れてすみませんでした』
ふ「ああ、これ。別に締め切りはまだ先だし大丈夫だよ。ありがとね」
『いえ………え？』
ふくらさんのデスクには昨日私が(幼馴染(名字))さんの代わりにやった編集データの入ったUSB。たしかに今日の朝渡したけど(幼馴染(名字))さん、もう提出したの？だったらさっきふくらさんが(幼馴染(名字))さんのこと褒めてたのって………
ふ「A？」
『あ、すみません。なんでもないです』
少しモヤッとしたものがよぎってしまう自分が嫌になる。これと三上さんが褒められていたのは別の件だったのかもしれない。そう思いたいのに私の脳は悪い方へと考えてしまう。
『三上さん、これの編集もう終わったんですね』
そう言って昨日私が編集したUSBを持ち上げる。お願いです。「Aがやったんでしょ？」って言ってください。別に感謝されたいわけではないけれど。
ふ「すごいよね。まだチェックできてないけど「自信作です！」って言われちゃった」
『………』
ああ、聞かなきゃ良かった。昨日の私の残業は、どうやら彼女の手柄にされてしまったらしい。別に良い動画ができれば誰がやったって良いんだけどさ。
ふ「A？どうしたのさっきから」
『い、いえ！なんでもないです！すみません』
彼女の嘘を告発するのも気が引けてまた困ったように笑ってしまう。河村さんに言われた日からやめようとは思っているが染み付いた癖はなかなか直らない。
ふ「そう？疲れてるなら仮眠室使って良いからね？詰め込みすぎても効率悪いし」
『はい、すみません』
そう言ってふくらさんは自分のパソコンに向き直る。どうやらふくらさんにはこの困った時に笑う癖はバレていないらしい。
『もっと頑張らなきゃ』
三上さんに負けないように。努力すれば、きっとふくらさんは私を頼ってくれる。もっと頑張れば……頑張らなきゃ。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 44人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：雪音 | 作成日時：2021年1月17日 19時
