オフィスの中心で愛を叫ぶ(kwmr)

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河村side


山「はい……その日からAは変わりました。学校を1ヶ月くらい休んで部屋に篭りきりになりました。……そのあと部屋から出てきたAが、今のAです」



伊「今のAちゃんが……全部演技ってこと？」



山「わかりません。どれが本当のAなのか……でもAはその1ヶ月で見違えるほどいい子になりました。遅刻もしなければ喧嘩をすることもない。いつもニコニコ笑って周りに敵を作らない……そんな子になったんです」



ふ「Aちゃんからは何か聞いた？」



山「なんで変わったのかは聞きました。理由は『周りがそれを望んだから』だそうです。僕が、周囲が、Aを殺したんです」



河「………」



あの人懐っこい笑顔を浮かべるAですら本当の山本Aではなかったのか？周りに求められるままに自分をどんどん上書きして……？



ふと、「テセウスの船」というパラドックスを思い出した。



【あるものの構成要素を入れ替えていき、全て入れ替わったときにそれは元と同じものと呼べるのか】



見た目も性格もまるっきり変わってしまったA。昔の彼女と今の彼女は、はたして同じ有栖川Aと言えるのだろうか。



こ「山本さんは戻ってほしいって思うんですか？」


山「わからない……でも、Aが周りから求められた『有栖川A』じゃなくて本当の自分を見つけられたら…とは思うよ」



僕は、なんて声をかければ良いんだろう。周りの理想通りに自分を変えてしまうA。





僕は________Aのことをどう思っているんだろう。

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