26 ページ27
ふくらside
『この人たちの時間をいただこうなんて頭が高いのよ下衆共』
それだけ言うと伊沢と僕の手を取って『行きましょうか』と言って歩き出した。わなわなと震えるファンの子たちに軽く会釈をしてその場を後にする。
『さてと、ここまで来れば大丈夫ですよね……私は失礼します』
Aちゃんは掴んでいた俺らの手をするりと離し、踵を返し走り出してしまった。
まるで俺らから逃げるように。
伊「ちょ、待てって！！」
やっと見つけたAちゃんだ。当然と言えば当然だけど、伊沢はAちゃんを追いかけて行ってしまった。
俺も2人を追いかけるけどAちゃんは踊ってみたの投稿をしてただけあって体力もあるし体も柔らかい。細い道にスイスイ入っていって今にも見失ってしまいそうだ。
伊「はぁ……はぁ……くそっ！」
ふ「伊沢！Aちゃんは⁉」
伊「見失いました。ここの角曲がったと思ったんだけどな……」
今俺らがいるのは住宅街。本当にここの角を曲がったとしたらその先は一本道だから見失うなんてないはずなんだけど……
ふ「……今、1番信じたくないけど1番可能性が高いことがある」
伊「なんですか……それ………」
ふ「ここ………河村の家だよ」
俺が指さした家には「河村」と書かれた表札。以前休日に遊びに来たことがあって、この辺りだとは思ってたけどまさか同じ通りだとは思わなかった。
伊「河村さんの家の中に逃げ込んだってことですか？」
ふ「わからない。でも全く知らない人の家に逃げ込むより可能性は高い」
伊「河村さんが俺らを騙してたってことですか⁉」
ふ「だからまだわかんないってば！とりあえず河村に聞いてみよう」
それから俺たちはオフィスに戻った。その間に一言も会話は無くて、伊沢はだいぶ思い詰めているようだった。
やっと見つけた妹を見失ってしまったこと。
仲間だと思っていた相手に裏切られてるかもしれないこと。
Aちゃんがいなくなって弱っている伊沢にとどめを刺すには十分すぎると思う。
ふ「ただいまー」
伊「………」
オフィスに着いても挨拶もしない伊沢。脱いだ靴も揃えずに一直線に河村の元へ歩いていく。
伊「河村さん……」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 86人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
雪音(プロフ) - rioさん» コメントありがとうございます！これからもご期待に添えるよう頑張ります！ (2020年9月23日 21時) (
レス) id: e88b8137a8 (このIDを非表示/違反報告)
rio(プロフ) - この物語大好きです、！ (2020年9月23日 21時) (レス) id: fc34d02cb0 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：雪音 | 作成日時：2020年9月22日 18時
