20 ページ21
河村side
伊沢がAちゃんと喧嘩(？)した日、帰り際あの場にいたメンバー全員にちゃんと謝れと念を押され、我らがCEOは帰って行った。
河「僕も帰るかな」
ふ「もう終わったの？珍しい」
河「今日は量もそこまで多くなかったから。じゃあお疲れ様ー」
オフィスの至る所からお疲れ様でしたーと返事が返ってくる。でも玄関を出てすぐ、僕の足は止まった。
河「雨じゃん…」
外はいつから降り出していたのか強めの雨が降っていた。たまたまあった置き傘に感謝して数日前の自分を称えた。普通に持ち帰るのが面倒だっただけだけど。
傘によって視界の上半分が塞がれる。そういう時っていつもなら見ないようなところに目がいくよね。そう、例えばこんな路地裏とか。
河「……そんなとこで何してんの？Aちゃん」
『河村さん……何してるんでしょうね。私』
路地裏にはAちゃんが傘もささずに立っていた。
河「入りなよ。送ってく」
傘を少しAちゃんの方に差し出しそう言ってもなかなかこっちに来てくれない。不思議に思っているとAちゃんは力なく首を振った。
『家には帰りません。兄さんに迷惑がかかるから…』
雨なのか涙なのか、顔はぐしゃぐしゃに歪んでいた。
河「じゃあ僕の家来る？シャワーくらいなら貸すけど」
どっちにしろこんなびしょ濡れ状態で伊沢のもとに返すわけにもいかないだろう。風邪だって引くかもしれない。
『いいんですか……？』
河「いいから。はやく、風邪ひくよ」
路地裏から引っ張り出して傘を半分貸してやると彼女は控えめに並び立った。
それからどう帰ったかは正直覚えてない。話をしたような気もするし終始無言だった気もする。ただ僕はとにかく、どうこの子を説得して伊沢と仲直りさせるか…そればっかり考えていた。
帰り道のコンビニに寄って簡単に宿泊セットを買わせて家に着く。
河「湯船なくて悪いけどとりあえず入ってきな」
こくりと頷いて脱衣所へ向かうAちゃん。着替えは僕の服でいいかな。
極力サイズが合うものを選んで持っていく。パーカーと短パンというなんとも質素な格好になってしまったが1日だけならまあ問題もないだろう。
『お風呂…ありがとうございました』
河「どういたしまして。髪乾かすからこっちきて」
ドライヤーを持ちプラグを挿す。大人しく僕の前に座ったAちゃんの髪を乾かしていく。
河「なんであんなところにいたの？」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 86人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
雪音(プロフ) - rioさん» コメントありがとうございます！これからもご期待に添えるよう頑張ります！ (2020年9月23日 21時) (
レス) id: e88b8137a8 (このIDを非表示/違反報告)
rio(プロフ) - この物語大好きです、！ (2020年9月23日 21時) (レス) id: fc34d02cb0 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：雪音 | 作成日時：2020年9月22日 18時
