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伊沢side

その言葉にこの場で1番驚いたのは多分鶴崎だ。きっとあいつはAちゃんの過去を知ってる。知った上で話すのはまだ早いと判断したのかもしれない。

鶴「A…」


『鶴ちゃん、無理なんてしてないよ』


鶴「……そう」


鶴崎は相変わらず暗い顔をしていたけどAちゃんはゆっくりと話し始めた。


『私が覚えている一番古い記憶は3歳の時、私は鶴ちゃんと出会い、許嫁となりました。その頃は母さま…本当のお母さんも元気で、よく私の頭を撫でてくれました』


ふ「前言ってたやつだね。俺の手がお母さんに似てるって」


『はい。ふくらさんの手は母さまみたいにあったかくて安心するんです。…でも母さまは私が5歳の時に病気で亡くなりました。お父様は、一回だって母さまのお見舞いには来なかった。それどころか母さまが死んですぐ新しい女の人を連れてきた…それが魅代の母親です』


伊「じゃあAちゃんにとって今のお母さんは継母なんだ」


『はい。父は私を道明寺家の跡取りとするために知識と技術を詰め込みました。今までは母さまが褒めてくれてたから頑張れたけれど、お母様が褒めるのは魅代ばかり。私は今まで一度だってお母様に褒められたことはありませんでした』



鶴「…A、ゆっくりね。無理しちゃだめだよ」



『…鶴ちゃん、大丈夫だよ。…家に居場所がなかった私にとって、鶴ちゃんは唯一の味方でした。鶴ちゃんは道明寺家の事情を察して、いつもギリギリバレないくらいに私を助けてくれたんです』


伊「さっきあの子が閉じ込められちゃうかもねって言ったのも家の事情の1つなの?」



『私の父は厳しい人で、何か気に入らないことがあると決まって私を外の物置に閉じ込めるんです。それも何十時間も。暗くて、狭くて、冷たくて…幼かった私を恐怖で支配するには十分すぎるものでした。それから私は従順に、父の操り人形となったのです』



ふ「学習性無力感に近いのかもね。長期にわたってストレスの回避困難な環境に置かれたものは、その状況から逃れようとする努力すら行わなくなるってやつ」


『まさにそれだと思います。父に反抗することなんてできない。父の言うことだけを聞いて従順に生きていけばこれ以上酷くはならない。そればかり考えてました』

鶴「Aのお父さんは他人の僕から見ても理不尽な人でしたからね。魅代ちゃんを褒めるためにAを罵るような…」

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雪音(プロフ) - ニュウさん» 伊沢さんは怒ったとき早口で捲し立てるタイプか口が悪くなるタイプか悩んだんですよね…!いい反応もらえて嬉しいです!笑 (2020年5月9日 11時) (レス) id: e88b8137a8 (このIDを非表示/違反報告)
ニュウ(プロフ) - 雪音さん» 最高です!!怒ってる伊沢さん…最高すぎません?笑 (2020年5月9日 11時) (レス) id: 1d82ba3bb7 (このIDを非表示/違反報告)
雪音(プロフ) - ニュウさん» お話更新しました!甘く…できたかな…?笑 (2020年5月9日 0時) (レス) id: e88b8137a8 (このIDを非表示/違反報告)
ニュウ(プロフ) - 雪音さん» お!もっと甘く!!楽しみにしています! (2020年5月8日 22時) (レス) id: 1d82ba3bb7 (このIDを非表示/違反報告)
雪音(プロフ) - ニュウさん» いつもコメントありがとうございます!!伊沢さんとの絡みが見たいという声が多かったので甘々を目指しました!これからもっと甘くできる…かな?笑 (2020年5月8日 21時) (レス) id: e88b8137a8 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:雪音 | 作成日時:2020年5月5日 18時

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