ナナワ ページ7
僕は、あの日のことを思い出していた。
彼女の編入手続きの際理事長に同伴した時のこと。
不思議な人だった。
とても同い年だと思えないくらい大人びて達観したような表情。
何も見えていないような目。
なのに心を見透かされているような。
しゃんと背筋を伸ばし、足の上で柔らかく手を添えて人形のように動かない彼女。
第一印象は人間的でない人間。
因みに僕は生徒会の仕事が少し残っていたために途中から同伴したのだが、彼女に出されたお茶の中にはお茶受けの和菓子が浸っていた。
「？？」
理事長がそんなことをするはずもなく、彼女がやったわけなのだがどうにもこの行動の意図が読めず困惑していたのは覚えている。
「それで、ここの学校の仕組みは大体は分かったはずだけれど……付いてこれているかい？」
「……」
「…………？」
理事長の顔を暫し見つめた(ように感じた)後、目の前に差し出された紙を伏し目がちに覗き込むと徐に手に取り
.
＿＿＿＿破いた。
ﾋﾞﾘｯ
ﾋﾞﾘﾋﾞﾘﾋﾞﾘｯ
「なっ……！」
転入前から拒絶しただと？
じゃあ何の為に編入試験を行ったのか。
「……どういう意味かな？庵崎さん」
理事長の表情も、いつもの気味の悪い薄ら笑いを無意識に崩している。
「……」
この問いに応えは返さず小さく千切ると菓子の浸った茶碗に押し込んだ。
そしてその時僕は、きっとこの菓子も理事長に勧められたからやったのだろうと検討がついた。
急に乾いたものを入れたせいで気泡の立つ茶の界面を無言で見つめている。
それを見た瞬間に僕は思ったんだ。
「(こいつを手に入れたい)」
と。
手に入れたいというのは特別な感情ではない。
ただ、こんな厄介者を手懐けることが出来たなら果てしない悦に浸れるだろうと。
芽生えたのは恋心ではなく支配欲だった。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
……あ。
「……」
居た。
何故E組である彼女がこちらに来ているのかは分からないが丁度考えていたところだ、タイミングがいい。
校庭を突っ切る形で真直ぐに歩いている彼女。
だが途中でフリーズしたかのようにその動きを止め、一瞬目が合ったような気がした。
「！！」
「……、…………」
気付けば僕が見つめていた場所には誰も居なかった。
神出鬼没、鉄仮面、不思議な行動の数々。
でも、今まで色々な人間を支配して来たんだ。
今更怖気づくこともあるまい。
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作者名：リン | 作成日時：2018年2月15日 7時
