ジュウイチワ【チイサナハナシ】 ページ11
暫く姿を見せなかった庵崎さんが、学校に来た。
いつもと違う格好をして。
「…………」
癖なのか変わらず机に腰掛け足をバタバタさせている。
その度に青い布が彼女の膝の上でヒラヒラした。
詰め襟のブラウスに青いワンピース。
右肩から左腰にかけて大きなフリル。
真っ青なワンピースが彼女の白い肌を更に青白く染め上げている。
「ね、ねぇ……流石にせんせーも怒るんじゃないかな？」
「そうかもね」
茅野の困惑気味な問いに僕は生返事を返した。
だって、今の彼女、なんかとても……。
ｶﾞﾗｯ
「やっほー渚くん、茅野ちゃん」
「お、おはようカルマくん……」
「おはよう！」
僕の思考を遮るように引き戸を開けたカルマくんは庵崎さんの存在に気付く。
「あれ？久しぶりじゃん庵崎さん、おはよー」
「…………」
「えーっ、無視しないでよー…………っていうかさ制服、どうしたの？」
あまりにも普通に話しかけてるから何とも言えないけど違和感がありすぎだ。
僕たち唖然。
普段通りのカルマくん。
喋らない庵崎さん。
「ねぇ……」
こちら側に背中を向けているその肩に手が触れようとした瞬間、
ｶﾞﾀﾝ
ﾊﾟﾀﾊﾟﾀ……
机から飛び降りて走って行ってしまった。
何故触ろうとしたのが分かったんだろう？
「言葉通り掴みにくいね、庵崎さん」
「無視されてたね」
「いつもだよ」
ワンピースの端が視界から消え、足音が聞こえなくなった頃みんなの時が進み始めた。
クラスの半数くらいが教室に集まっていて……ってことはカルマくん今日は結構来るのが早かった？
「ん？」
「どうしたの、カルマくん」
「これ見て、渚くん」
自分の足元を指さして言う……スクバ？
「スクバがどうかしたの？」
するとカルマくんはニヤリとその顔に笑みをしたためて、
「これ、庵崎さんのだよ」
「え」
「珍しいね、庵崎さんが手ぶらじゃないの」
茅野の言う通り、庵崎さんが今までの学校生活でスクバや筆記用具を持って来たことなんてない。
大体授業にも参加しないくらいだ。
本当に珍しい。
「何か、赤いのか出てるよ？」
「……本当だ」
「出してみちゃう？」
「えっ？だ、ダメだよそれは！」
「いーじゃん、バレなければ大丈夫」
言うが早いかもうジッパーを開けていた。
「もう……カルマくんってば」
そして中から赤い"何か"を取り出す。
「……ワンピース？」
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作者名：リン | 作成日時：2018年2月15日 7時
