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A「ありがとうございます、…
ピアノ、…お上手なんですね」


「お上手なんて言ってもらえるものじゃないよ。
習ってもないし。…ただの趣味だから」


A「趣味なんですか?!…凄く凄く綺麗でした、…」


「ありがとう。…ピアノを弾いてる時は、全部…全部忘れられるんだ。」




ピン、と紡がれた高音の一音。

何故か物凄く寂しい気持ちに囚われて、
この人の抱えているなにかを表現しているかのようだった。



「ごめんね、無駄な話をして。
先生の所に行きなよ。」


A「あの!

…あの、また…聞きたいです、ピアノ。」


「おれの拙い演奏でよければいつでも。」

A「いつならいいですか!」



「そうだな、…毎週、月曜日と木曜日ならいいよ。」




ふわりと微笑んでくれた彼に、
また心臓がとくんと鳴った。


儚い。


その表現が、似合う表情をしていた。



A「あの…あと名前…聞いてもいいですか」

「ああ、言っていなかったね。…作間龍斗。二年。…君は、一年生だね」




ちらりと私の足元を見た彼、作間先輩は「名前は?」と私に尋ねる。

少し傾げられた首が、可愛い。




A「立花Aです」

龍斗「立花。覚えておくよ」




おれも今日はもう帰るから、立花も先生の所に行ったら帰りなよ。


作間先輩にそう促されて、私はこくんと頷いた。






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作者名:にこり。 | 作成日時:2018年3月19日 21時

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