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暫くして、「そうじゃないってのは分かってるんだけどな」と途端に落ち込んだ様子で口を引き結ぶ御影君の様子にそっと小さく笑えば、彼は何時ものように__否、何時もよりも幾分かやはり気力無さげに目を細めて私を見た。
笑顔と評する事さえ出来ない表情だ、恐らく千切君が言っていたものよりもずっと穏やかではあるのだろうが、何時も快活に笑っている御影君を思うと気味が悪い程に暗くて読めない。
「Aって案外、好意とかに敏感なタイプだよな」
『鈍感では無いと思うよ』
「いや、そこは肯定出来ねぇけど……」
人からの好意には、少なくとも鈍感では無いと自負している。もし鈍感であったなら、今頃私は色んな人の心を弄ぶとんでもない女になっていたのかもしれないから。顔だけで私に異常なまでに懸想する人間にどれだけ会って来たと思うのか。
敏いか、鈍いかで問われれば間違いなく敏い部類だと思っている私と対称的に、敏感だと聞いておきながら鈍感を否定しきれない様子の御影君に小首を傾げれば、彼は「それも月野Aらしいっていうか」とポツリと呟く。
「前までの俺の想像よりもずっと敏くて、鈍くて………可愛いよな、Aって」
『後半部分だけなら素直に受け止めるね』
「前半も頭に入れておいてくれ、マジで」
「月野Aが俺を心配しに来るとか、考えた事も無かったわ」との彼の言葉に、一体私はどんな人間だと思われていたのだろうと考えたのは言うまでもない事だ。しかしまあ、瞬間の事ではあるがフッと穏やかな表情を顔に浮かべた御影君を見てしまっては言うのをやめておく事にした。
『解釈違い?』
「解釈違いっつーか……ほんとに同じ次元に生きてる事を実感はした」
『そっか』
「一ミリも興味無さそうだな」
『寝れそう?』と聞けば「まあな」と、いまいち煮え切らないが前よりははっきりと答えてくれた御影君に満足して、彼の進路上から退く。先程はそこまで鬱々としている様には感じなかったが、後ろ姿を見ると確かに絶不調に見えなくもない。
「マネージャーすげぇな!」
「つかやっぱ玲王が異常にAにデレてるよな」
『あれで少しは効果あると思う?』
「分かんねぇけど………まあ、嬉しそうだったよな。玲王とは思えねぇ顔してたぞ」
『御影君は大体何時もあんな表情だけど』
「デレッデレじゃねぇか……」
やっぱり、あんなに分かりやすくこちらを窺っていた國神君と千切君に気付かないあたり重症かもしれない。
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作者名:信楽 | 作成日時:2022年12月25日 2時