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何を心が狭いと言うのか。全く思い当たらないので、彼を見つめて次の言葉を待てばその視線に耐え切れないといったように彼は眉を若干寄せながら「玲王にも」と小さく呟いた。
『御影君にも？』
「……俺にやったみたいに、作ってやったりしたら効くと思うけど。アイツ、Aには反応するし」
『あ、嗚呼。なるほど、確かに差し入れくらいなら大丈夫かも』
というよりも、私に出来る事はそれくらいしかないかもしれない。私はそもそも専門的な知識があるからスカウトされたという訳では無く、基本どれも最低限の事を広く出来るというだけの話なので、肝心な時に役に立てないのだ。
差し入れならそこまで負担にも思わないだろうし確かに良いな、と笑顔で礼を述べる私を見て、千切君は自分で言った事にも関わらず何処か不服そうな様子であった。どうしたのだろうと思いながらも、彼の先程の様子も含めて考えてみれば、少しだけ心当たりがあったりする。
『千切君は優しいね。御影君も喜ぶよ、きっと』
「………もしかして、バレてる感じ？」
『何となく』
「うっわ、マジかよ……」
『でも一番最初に振舞ったのは千切君だよ』と次いで言えば、彼はいよいよ恥ずかしくなってきたのか顔を片手で押さえて伏し目がちに黙り込んでしまう。彼の紅潮した頬を見て、何もそんなに恥ずかしがる事は無いのにと思ってしまう私は、もしかしたら何処かズレているのかもしれない。
目の前で何やら考え込んでいる様子の千切君をどうするべきか、と思いながら同時に使えそうな食材を脳内で並べていれば、彼は暫くして「ぁ〜」と掠れた小さな唸り声をあげた。
そして、恐る恐るといった様に「ぜったい、笑うなよ」と指の隙間から赤い目を覗かせて私を見あげる。正直笑いは浅い方だと思うので面白い事を言われたらひとたまりも無いだろうが、気恥ずかしげな様子に興味を引かれて笑顔で頷いておいた。
「………正直、俺とAだけの秘密だと思ってたから、やなんだけどさ」
そこまで言って、まだ続きがありそうだったのに誤魔化す為にか「まあ、流石にアイツ寝付き悪すぎて心配だし。俺は、アレでよく眠れたし」と言う彼につい癖で笑いそうになって、咄嗟に堪えながら彼の恥ずかしそうな横顔を見つめる。それも本心なのだろうが。
『やっぱり、可愛い方が強い気がするかな？』
「………はぁ、やっぱAって、……いや、なんでも無い」
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作者名：信楽
| 作成日時：2022年12月25日 2時
