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凛君も、あまり興味は無さそうではあるが髪質が綺麗だし蟻生君式ケアを受けたらピッカピカになりそうなのにな。そう、特に意味も無く残念がる私とは対称的に、私へと伸ばした手を掴まれている蟻生君は手を下ろしながら「嫉妬か? だとしても今のやり方はノットオシャだな」と、包む事無く思った事をそのまま口に出してしまう。
髪を広げてポーズじみた体勢をとり言う蟻生君には、もちろんの事ながら悪意も揶揄う意思も無いだろうに。そのあまりにもストレートな物言いに、やはりと言うべきか凛君は顔を不愉快そうに顰めた。
「あ? 勘違いすんな、不快だったから止めただけだ」
『あらら、そうなんだ。何だかごめんね』
「……」
視界の端で時光君がビクビクと怯えているのが見える。この空気が、というよりも主に凛君の物言いの鋭さに威圧されて縮こまってしまっているのだろう。流石に可哀想だ。
適当に宥めつける様に謝罪を述べた私を見て、彼は何だか納得のいかない表情を、その彫刻の様な精巧な顔立ちの中に一瞬浮かべた。凛君に関しては、笑顔どころか表情を和らげた時すら見た事が無いのだが………最近は、私と話すと直ぐに表情を固くされてしまう。
嗚呼、でも今のは適当に謝った私も悪いのかな。謝り直した方が良いか、と小首を傾げて逡巡した瞬間。「あれ、A……」と聞き慣れた声が私の名前を小さく呼んだ。
「ほんとだ、Aが居る。なんで?」
「Aちゃんだ。今日もかわいいね!」
『通過おめでとう〜。お仕事だよ』
私を呼んだのは潔君の様で、その彼は私と目が合った瞬間にその場に凍りついたかと疑う程ピシリと直立不動の体勢になる。そして、そんな彼の脇から彼を置き去りに真っ先に飛び出して来たのは蜂楽君で、その後からゆっくりながらも不思議そうな表情で歩み寄るのは凪君だ。こちらも不思議な面子。
特に変化が無くても、会う度に労ってくれたり褒めてくれたりする蜂楽君だが、1stステージをクリアしたばかりで疲れもあるだろうにも関わらず、何時も通り人懐っこい笑顔を浮かべて私に駆け寄ってきた。
ありがとう、と告げれば彼は更に口角を吊り上げて笑みを深める。まるで享受するかの様に心地良さそうにされると照れてしまうな。
「これ、どういう……」
遅れて潔君が漸く解凍された様で、私の方へと歩み寄るその背後で、モニターが「ヴンッ」と音を立てる。お兄さん的には、二チームが揃ったので説明タイムといくつもりなのだろう。
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作者名:信楽 | 作成日時:2022年12月25日 2時