【ブルーロック】顔面国宝だからといって。 (ページ33)

今日:509 hit、昨日:1,027 hit、合計:1,065,980 hit

32 ページ33

全戦全勝で調子が上がっているチームVの余裕のある雰囲気を肌で感じながら、潔君達の居るチームZを待っていれば、そう時間が経た無いうちに彼らが到着する。私を視界に捉えた瞬間に、怖い程に真剣だった目付きを和らげ、目を丸く見開く彼らに小さく手を振り返した。

全部の試合を観る事は出来ていない為、彼らの前回の戦いぶりを私は知らないが、聞く所によればどんでん返しの超展開だったらしい。色々とイレギュラーな事が起きてしまったともアンリさんから聞いたが、兎にも角にも印象的な試合だったのだろう。その話を聞いてこの試合に足を運んだというのも、実は確かにあったりするのだ。

「いいか久遠。ぜってぇ邪魔すんじゃねぇぞ」
「分かってるよ執拗いな」
『……？』

LASTGAMEまで、の文字の横で光るタイマーが刻一刻と時間を刻むのを見ながら、静かに試合開始の合図を壁に寄りかかって待っている私の耳にふと届いたのはそんな会話で。

雷市君が久遠君を睨みつけながら釘を刺して、それに久遠君が何時もの柔和な表情を浮かべること無く鬱陶しそうに返す目の前の光景は異様だった。否、雷市君だけではなくチームZ全体から、何処か久遠君を遠巻きにしている雰囲気を感じとれて、疑問は徐々に私の中で確信に変わっていく。

『裏切っ、た？』
「！」

昨日は試合の後にアンリさんが慌てていて、お兄さんも決して機嫌は良くなさそうだった。何故そんな事になっているかは戻ったばかりの私には分からなかったが、今漸く点と点が線で結ばれた様な気がする。

まだ疑念が拭いきれないものの、それが一番可能性が高いと思い発した私の「裏切り」という発言を聞いて、潔君がその青い瞳に私を映した瞬間。ピッ、と電子的な軽快な音がしてタイマーがゼロを示した。

『………』

御影君がボールを蹴りだして、待ちに待った試合が始まったのを静かに眺める。その間にも、頭の中では情報の整理が淡々と行われていた。

裏切りは、私が一番嫌なもの。一番は言い過ぎかもしれないが、トラウマでもあるので苦手意識が強いのは否めない。だから、裏切られる程の関係性を築かない為に誰とも馴れ合いはせず、ただただ高嶺の花に徹していたのだから。

私を利用して人気者になりたかった子も、好きな子に意識してもらいたかった子も、ただ私を蹴落としたかっただけの子も沢山いて、幼心にとはいえ裏切られたのが悲しかったのは今でも覚えている。