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彼らの休憩時間をあまり邪魔しない方が良いだろうと思い立とうとしたら、私の足を凪君が掴んで「まだ居て」とあざとく見上げてくるものだから、結局そのままお邪魔させてもらっている。スカートじゃなくて良かった。
どうやら私がやっていたFPSのゲームを凪君もやっている様で「後でフレンドなろ」と誘われたり、私のランクを聞いて「ガチ勢じゃん」と評価を頂いたり。勉強の合間に、気分転換にやる程度なので決してガチ勢では無いが。どちらかと言えばエンジョイ勢である。
『そうかな……』と首を傾げながら、ゲームの写真を映していた画面をスクロールしてアプリを落とそうとすれば、凪君が「あ」と声を上げた。
「A、バイク乗るの？」
『うん、免許取っただけだけどね。近場の大学に行くつもりだから、バイク通学してみたいなって』
「月野Aがバイク……」
『この写真見たのかな。可愛いでしょ、白くて丸っこくて。このバイトでお金何とか貯められるかなって感じなんだ』
「月野Aが白くて丸いバイクに乗る……最強か？」
凪君が長い指で指し示したのは、私が買いたいとマークしていた黄色がかった白が可愛いバイクであった。『意外？』と聞けば「ちょっと」と素直に頷く凪君の横で、御影君は惚けた表情で思考を口からダダ漏れに垂れ流している。
暫くそうして固まっていたかと思えば、彼はバッと勢い良く顔を上げて「貢がせてくれねぇ?」と鬼気迫る程の声音で真に迫って言う。
『駄目だよ、御影君のお金は自分の為に使ってあげて』
「貢ぐのは俺の為になるだろ……？」
『うーん、それでもだめ』
「でも」
『……お願い、ね？』
「ぐっ、」
御曹司故にだろうか、貢ぐで片付けていいような値段では無いバイクを簡単に私に買い与えようとする御影君に首を振るも、何故だかこういう時は強情で「何で……？」と言わんばかりに残念そうな顔をされた。
推しに貢ぐとかいう感覚なのだろうか。私はアイドルではないし、私の顔にどう思われても今更良いのだが御影君に貢がせるのは居た堪れない。御影君とは、折角だしもっと気軽な関係の方が嬉しいのが私の思いだ。
よって、貢ぎの件に関しては諦めてもらいたい。彼が私の顔に滅法弱いのは知っているので、手を取って小首を傾げて薄く笑えば彼は胸を押さえて絶命した。ごめんね。
「A、ほんとに顔良いよね」
『ありがとう』
「……うん、俺もAの笑った顔好き」
……凪君は案外タラシな子。メモしておこう。
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作者名：信楽
| 作成日時：2022年12月25日 2時
