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『他の皆さんが何処に居るか分かるかな?』
「あ〜、彼奴らならまだ朝飯食ってる頃だと思うけど」
昨日辛かったしな、と呟く千切君。今日からもっと辛くなる事は何となく予想しているのか、少しどんよりとした重い空気を纏わせる彼等に苦笑した。
メニューと大体の開始終了時刻くらいは知っているが、それを見るだけでもハードな内容だったと記憶している。それでも、持てる限りの力を出して頑張る彼等には尊敬の念を抱かざるを得ない。凄いな。
『それなら後で伝えておいてほしいんだけど、スポーツドリンクとタオルは用意してあるから好きに使ってほしいの。他に不足物があれば呼んでね』
モニターにでも呼びかければ、お兄さんが見つけて対応してくれるかも。と冗談混じりに言えば、乾いた笑いを彼等は浮かべる。お兄さん、ちょっと苦手意識持たれちゃってるじゃん。
「もしかして、スポーツドリンクってAの手作りか?」
『ん〜、残念だけど半分以上は機械頼りかな』
「いや……一割でも嬉しい」
『……そう? なら良かった』
少し期待を込めた瞳で、私にそう問うのは千切君だ。自信を持って真心込めて全部自分で作ったと言えればカッコ良かったかもしれないが、二百越えを一から作るのは骨が折れるどころでは無い。故に機械を使わせてもらったのだと素直に告げるも、それでも嬉しそうに「ありがとな」と言う彼は正直可愛かった。
早速取りに行こうとしているのか「何処にあるの?」と目をキラキラ輝かせて尋ねる蜂楽君に『食堂の隅の方にあるよ』と言えば、潔君の腕を引っ張ってそのまま駆け出そうとする。
仲が良いが同じ高校なのだろうか、と首を傾げていれば不意に蜂楽君が私を振り返った。
「食堂と言えばで思い出したんだけど、Aちゃんも食堂でご飯食べるんだよね?」
『うん』
「じゃあ、今日は一緒に食べようよ! 昼飯!」
「え、ちょ蜂楽……!」
「潔だってAちゃんと食べたいでしょ」
「それは……」
純粋か笑顔で真正面から誘われて目を一、二度瞬かせる。誘ってくれた蜂楽君も、そんな蜂楽君にからかわれて耳を赤くしながら私を窺う潔君も、蜂楽君の意見に分かりやすく賛同する千切君と國神君も。
『迷惑じゃないの?』
「何でだよ、な訳ないだろ」
『お椀とか、ひっくり返さない?』
「………あ〜」
「まあ、何とかなるだろ」と不確実な答えを導き出す國神君に小さく笑う。
『ありがとう、なら一緒に食べさせてほしいな』
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作者名:信楽 | 作成日時:2022年12月25日 2時