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彼等に名前を告げ忘れたから今日こそはと思っていた筈なのに。名前と共に昨日告げようと思っていたのに忘れていた事を伝えれば、彼等は「案外抜けてるんだな」と意外そうに笑った。

こんな顔でも平凡な高校生だから、案外人並みだったりする。やはり、この顔は何でも出来る様に見えてしまうらしい。人一倍器用なのは認めるが、何でも出来るという程では無いのだが。



「……じゃあ、思い切って下の名前で呼んでも良いのか?」
『勿論。呼びやすい方で呼んでくれて大丈夫だよ、千切君』
「俺も呼びやすい方で良い、ケド」
『うーん、まだちょっと気恥ずかしいから慣れてからでも良い?』
「ん"」



喉に異物でも詰まらせたかの様なくぐもった声を一つ零してから、千切君はコクコクと何度も細かく首を縦に振る。「A、」と呼ばれた気がして返事をすれば、彼は赤くなった頬を掻きながら「照れるな、これ」と眉根を下げて笑った。可愛い反応だ。

余程慣れていないのか、言いづらそうに、しかし嬉しそうに何度も私の名前を小声で呟いて練習する彼に、流石に恥ずかしいなと思った矢先。私の腰に腕を回していた黄色い瞳の彼が、「Aちゃん」と唐突として私の名前を呼んだ。



「って、俺も呼んでもいい?」
『いいよ。私にも、蜂楽君って呼ばせてね』
「……うん、やった〜!」



上目遣いで、何ともあざとく問うた彼の言葉に首を振る訳が無い。先程自己紹介をしたので覚えていた彼の苗字を呼べば、それだけでも彼は両手を上げて純真に喜ぶものだから私まで嬉しくなってくる。

私の手を取って上下に振り回し、さながらフォークダンスの様に踊り出しそうな程に浮き足立つ蜂楽君を横目で眺めていた潔君も、「……俺、も」と蚊の鳴くような声で呟いたかと思えば、私と目が合うなり自信を無くしたかの様に分かりやすく沈み出す。そんなネガティブにならなくても。



『潔君も好きに呼んでいいんだよ』
「え………じゃあAで」
『はーい、承りました』



途端に顔を輝かせて思いの外グイグイと来た潔君の、今まで見た中で一番幸せそうな笑みに正直そこまでかと驚く。小さくガッツポーズをしている様子は歳頃の男の子らしくて微笑ましい。



『國神君も良かったら………あれ』
「俺も………ぼちぼち」
『じゃあ仲間だね』
「うっ」
「國神!!?」



目の前で崩れ落ちる國神君。あれだけの身長差があるにも関わらず、今はつむじでさえ丸見えだ。かなりの初心なのだろう、私の顔に負傷しがちだ。

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作者名:信楽 | 作成日時:2022年12月25日 2時

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