【魔法使いの約束】最凶の魔女は、月に愛される (ページ2)

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プロローグページ2

－－いつからか、この世界は壊れかけていた。

いや、いつからか、ではなく……最初からとっくの昔に壊れかけていたのかも知れない。

黒青色(こくせいしょく)の空に浮かぶ、丸い大きな黄金の月。

この世界では、最も忌み嫌われﾞ災厄ﾞとされる存在。それが……ﾞ月ﾞだった。

月は、この世界を愛した。無論、世界も月を愛した。月に愛され、月を愛してしまったが為にこの世界は壊れかけていた。

けれど、それでも……。世界と月は、愛し合うことを止めはしなかった。

否、出来なかったという言葉があっている。月は、とある女をとても愛していた。
その女は、魔女という存在としてその世界に産み落とされた。

魔女……人々からは、魔法使いと呼ばれる彼女は人々に拒絶されていた。

異形の力を使う、忌むべき存在。普通の人間とは違う、美しき容姿。
人々は、その存在を忌みながらも愛していた。

魔女は、時を経るたびに美しく育っていった。そして、世界で最も強く美しいﾞ古の魔女ﾞとしてただ生きていた。

－－美しき魔女、残酷な魔女、優しい魔女。
そして、憐れで孤独な一人ぼっちの魔女。

その存在を、月は愛さずには居られなかった。それも、彼女の存在が大きいことからだった。

彼女は、空に浮かぶ月と共に育っていった。そこには、愛情も恋慕も親しみもない。

けれど、そこには長年の月日が生み出したﾞ縁ﾞとも呼べる繋がりが確かに彼女と月を繋いでいた。

故に、魔女は月に呪いを掛けられた。永遠に解けない、呪縛とも呼べるﾞ愛ﾞを注がれてしまった。

その魔女の名は、世界に知らぬ者はいないと言える程に轟いていた。

北の国のﾞ古の魔女ﾞ。名を－－A。

これは、そんな彼女と月の壊れかけた世界で紡がれる一つの物語。