壱夜 ページ3
とある山の、奥深く。そこに、一つの大きな屋敷が佇んでいた。周りは、もうすぐ夜の帳が降りようとしており薄暗い。
そんな屋敷の近くの、巨木の頂上。そこに、一人の影があった。……今回の物語の要とも言える、風魔党の現当主である。
そんな当主は、黒の狐面を顔に付け何処か遠くを見やっている。傍から見れば、幼い子供が木の頂上に居るため驚くだろう。
だが、彼等は忍。この様な、巨木の頂上に登り立つことなど朝飯前と言えるほどに呆気なくこなして見せる。
そんな風魔の現当主が、何故木の上に登っているかと問われれば答えは簡単である。……ここら一体の山は、風魔党が所有する私有地だからである。
そして、彼女こそ風魔党現当主。なれば、自身の所有する土地の監視をする事も役目に当てはまっているのだ。
と言っても、周りは薄暗く視界は良好とは思えない。けれど、忍は視覚・聴覚・嗅覚などと言った五感が自然と鋭くなっている。
その為、周りが暗かろうと見えなかろうと関係はない。その場合は、聴覚や嗅覚などで対応をするからだ。
その為、どんな状況下であろうと忍は任務を完璧に遂行出来る。故に、雇い主を守ることに特化していると言っても良い。
そして、そんな彼等が行動する時間。其れが今、来ようとしていた。
【忍】は、闇でこそその能力を最大限に発揮させる。日の元でも、扱う事は可能だが夜の闇こそ彼等の時間。
それ即ち、彼等が最も能力を発揮できる時間が来るのだ。そして、彼等の仕事は夜闇の中で行われる。
そんな、彼等【忍】にとって至福の時間とも呼べる夜が来ようとしていたが彼女は一人嫌な予感を覚えながら木の上に立っていた。
面の下に隠れる、瞳は辺りを静かに見回し異常があれば直ぐに動けるように愛刀の太刀は背中に背負われている。
そして、その"異常"は突如として現れた……。
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作者名:千本桜 | 作成日時:2019年8月6日 16時