検索窓
今日:1 hit、昨日:7 hit、合計:19,980 hit

気配 ページ5

〜Aside〜





−−−嗚呼、眠っていたのか。今は、何時だろうか。





私は、また何度目かの目覚めに溜息(ためいき)を吐く。地面は、いつも通り冷え切った地下だった。





きっと、あの実験の後に教会の方が気絶した私を此処に入れたのだろう……。





私は、見えなくなった()を静かに開けるがやはり目の前には闇ばかり。





別段、何も思うことは無かった。悲しみも苦しみも、喜びも嬉しさも。





−−−次の実験は、いつからだろうか。あと数分後?数時間後?明日?明後日?





分からない。でも、きっと此処に居ればやはりずっと実験は続く。もう、何を言っても無駄な事はここに来てから分かった。





だから、私は無駄な事を考えない為に感情を捨てたのだから。





私は、手足に繋がる枷を少し動かすと枷に繋がる鎖がジャラジャラと音が鳴る。私を、逃がさない為の枷。





何とも言えない、この冷たさにもとうの昔に諦め受け入れ繋がれている。周りは、私を愚かだと(ののし)るだろうか……。





今では、逃亡も諦め感情を捨てた忌子(わたし)を。哀れな愚かな、堕ちた小鳥だと……。





−−−此処は、鳥籠。私を、逃がさない為の箱庭。とても冷たくて、何も無いただの檻。





其れが、私には相応しいのかもしれない。私が、歴史に刻まれた英雄(サーヴァント)を使役する(マスター)と呼ばれる存在だとしても。





私には、この何も無い空虚(カラ)の檻がきっとお似合いなのだ。研究員の方も、言っていた。





是は、人類が進歩するにはなくてはならない尊い犠牲(イケニエ)なのだと……。





−−せめて、是から生まれてくる英雄(サーヴァント)の方々にはこのような場所に来て欲しくない。





きっと、利用されて捨てられるのがオチだから。だったら、こんな私でも最期まで(マスター)として守らなければいけないのでは……。





小さく、そんな後悔と思われる感情(思い)を抱いていると地下に気配が一つ増えた。





きっと、魔術教会の方だろう。今日は、忙しい一日だ。嗚呼、早く実験を終わらせてまた長い長い眠りにつきたい……。





そんな、淡く儚い夢を抱きながら私は静かにその瞬間を待つのだった。

対面→←案内



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.8/10 (46 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
137人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

アルファ - 頑張ってください!続き楽しみにしています! (2020年3月24日 14時) (レス) id: 2d5813c050 (このIDを非表示/違反報告)
Fg - 面白いです!続きが気になります。更新楽しみにしてます! (2019年7月9日 18時) (レス) id: 2a87c9b1c0 (このIDを非表示/違反報告)
パスタ - 初めまして!続きがとても気になります!更新頑張って下さい! (2019年6月4日 22時) (レス) id: f9a3bc2453 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:千本桜 | 作成日時:2018年11月21日 22時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。