22話 狂犬のつまらない話 ページ39
それから数日、いつも通りになっていった。ひとつ変わったことは、フューラー様が学校を去ったこと。
生徒会のみんなはもう受け入れていたけど、玉の輿を狙っていた貴族たちは醜い顔をさらに歪めていた。
生徒会長はオスマンさんが一時的に受け継いだらしい。その一時的という言葉にはどういう意味が詰まっているのか、私達に分かるわけが無い。
「リン帰ろーぜ」
「ちょっと待ってちょうだい、もうそろそろ来るから」
何が、とキョトンとするゾム。廊下から、何度も鬱陶しいと思ったバタバタという足音が聞こえてくる。
今となってはそれですら心地いい。
「リン様あああああ!!!一緒に帰りましょーー!」
「…そう来ると思って、待ってたわよ」
げぇ…と嫌そうな顔のゾムが見る方向には生徒会一同。みんな、顔つきが変わった。
この人達が、この国を担っていくと思うとなんだか頼もしく感じるわね。
「…リンと2人が良かった……」
「駄々こねないでよ…」
相変わらずなゾムを軽く小突く。
仲良しだよね、ホント。だなんて鬱さんがやれやれという風に言ってきた。
ゾムが蹴ると大袈裟に「いったぁい!!」だなんて叫ぶ。……はて、本当に生徒会とは何か分からなくなってきたわね。
「リン様、一緒に帰りたいのが1番の願いなんですけど……
もうっ、コネシマさん!自分で言ってくださいよ!!」
コネシマ?と思いノエルが向いている方向には何となく気まずそうなコネシマ様の姿。
難しい顔をしてうぅ〜ん、と唸っている。ふと目が合うと直ぐに逸らされる。
「…あぁ〜……ちょっと、話ええか」
「…いいですよ」
私たちは校門で待ってます!とノエルがみんなを外に連れ出してくれた。おかげで教室に2人きり、気まずいわね。
呼び出した本人は黙りとして窓の外を見ていた。
「…出会いは最悪だった……なんて、小説の始まりのような出会いだったわね、私達」
「…せやなぁ……マジで面倒せぇのがドアで待ち伏せしとる思っとったからな」
覚悟を決めたように、深呼吸をする音が聞こえてくる。
…ああ、もしかして私勘違いしてたかもしれない。フューラー様の頼んだって、こっちなのかもね。
「…俺な、子供ん頃売り飛ばされてん」
外を見つめるコネシマ様の目は、酷く哀愁漂うものだった。
「…闇オークションってやつな。前の家では俺の上に1人居たから俺は用済みやってん」
今は聞こうかしらね。彼のくだらない過去の話を。
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クロスてゃん - ありがとうございますぅぅぅ!アルネの事件簿と気づいてガチ泣きしました…本当に嬉しいです更新頑張ってくださいね! (2021年11月23日 23時) (レス) id: c934f9389d (このIDを非表示/違反報告)
??? - この小説なんなん? まじ泣きしてしまうわ (2021年10月3日 20時) (レス) @page27 id: 2651f7c57d (このIDを非表示/違反報告)
暁郗 - この使用人たちの名前。主人公の名前。家が大火事。………おっとぉ??? (2020年9月6日 23時) (レス) id: 14cb33816d (このIDを非表示/違反報告)
暁郗 - もし違ったら失礼なのですが。この小説の使用人たちの名前って、某超絶イケメンの最凶の吸血鬼エビリィ!ブラッティ!ノインテーター!!のお方とあの触覚が愛らしい吸血鬼マニアちゃんとその他いっぱいの人気推理ゲームじゃないすかぁ!何ですかこれ、素敵です!! (2020年9月6日 23時) (レス) id: 14cb33816d (このIDを非表示/違反報告)
理那(プロフ) - そうだ、名前変換で気付かなかったんだ。この主役、"リン"ちゃんだ。 (2020年8月2日 18時) (レス) id: db0db57d74 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:彼岸桜+α | 作者ホームページ:http://uranai
作成日時:2020年4月2日 10時