21話 ゾムとキーホルダーと私 ページ36
次の日、仕事も落ち着いたので久しぶりに学校へと向かう。レイヴィスが馬車を出すと言ってくれたけれど、私は歩くと言った。
ここを通れるのも、あと少しの話なんですもの。
学校に近付くにつれて、私の姿を見て指さしたり驚いたりしている人が増えていく。全く、本当に陰鬱な気持ちになるわ。
「リン様大丈夫でしたの!?」
「キャルベッス本当に最低ですわっ!」
「やはりお美しいわね」
「大丈夫に見えるの?いい医者を紹介して差し上げるわ。キャルベッスが最低なのはいつもの事だもの、何を今更騒いでるのよ」
いつもなら笑って愛想を振りまくけど、そんな事もうしなくていいわね。これが、我々国を支えるパッヘルベル家の姿なんですもの。
みんなを騙すだなんて、もっての他だと思わない?
「…ん、パッヘルベル」
「あら、フューラー様…お久しぶりですね」
少し疲れ気味に見えるわね…私よりももっと大変なのね……真っ赤な瞳が死んでるわ。
「お前も…俺と同じか」
「…えぇ。そうですね……お互い大変ですが乗り越えましょう」
「あぁ。俺は今日以降学校に来ることが出来ない……あと少ししかないが、この学園を頼んだ」
なんで私に頼むのか、なんて愚問。
「…おまかせください、少しの間ですが…ね」
初めて、笑い合う。周りのうるさい声も特には気にならない。彼ら生徒会がフューラー様に着いてきた理由はこれなのね。
まるで、人望の擬人化よ。
「…パッヘルベル、ゾムが会いたがっとったから会ってやれよな」
「今から会いに行くわよ」
互いに背を向け歩き始めた。次に言葉を交わすのはいつになるのか…近いかもしれないし遠いかもしれない。
「…あ、れ……ぇぇええええ!?」
大声が聞こえてきたと思ったら首が痛くならない程度の高さに顔がある人が走ってきた。前髪は真っ直ぐに切りそろえられている。
「ロボロさん、元気ねあなた」
「なっ、なんでリンさん…ぇ…あ、もう大丈夫なん?」
「大丈夫よ」
相手が焦りすぎてると冷静になれるってこういう事なのね。落ち着いたロボロさんと教室へ歩いていく。久しぶりね、この校舎も。
ロボロさんと別れて教室に入る。見られたり、声をかけられたりそれはいつもと変わらなかった。
ただ、パーカーのあいつが飛んで来ないこと以外はね。窓側の席、誰も座ってないんだもの。
私が来なくなってから放浪癖が戻っちゃったのかしら。フューラー様が任せたって、これの事じゃないの。
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クロスてゃん - ありがとうございますぅぅぅ!アルネの事件簿と気づいてガチ泣きしました…本当に嬉しいです更新頑張ってくださいね! (2021年11月23日 23時) (レス) id: c934f9389d (このIDを非表示/違反報告)
??? - この小説なんなん? まじ泣きしてしまうわ (2021年10月3日 20時) (レス) @page27 id: 2651f7c57d (このIDを非表示/違反報告)
暁郗 - この使用人たちの名前。主人公の名前。家が大火事。………おっとぉ??? (2020年9月6日 23時) (レス) id: 14cb33816d (このIDを非表示/違反報告)
暁郗 - もし違ったら失礼なのですが。この小説の使用人たちの名前って、某超絶イケメンの最凶の吸血鬼エビリィ!ブラッティ!ノインテーター!!のお方とあの触覚が愛らしい吸血鬼マニアちゃんとその他いっぱいの人気推理ゲームじゃないすかぁ!何ですかこれ、素敵です!! (2020年9月6日 23時) (レス) id: 14cb33816d (このIDを非表示/違反報告)
理那(プロフ) - そうだ、名前変換で気付かなかったんだ。この主役、"リン"ちゃんだ。 (2020年8月2日 18時) (レス) id: db0db57d74 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:彼岸桜+α | 作者ホームページ:http://uranai
作成日時:2020年4月2日 10時