☆ ページ35
公爵への挨拶を終え、部屋に戻ればレイヴィスとハインツがいそいそと荷物をまとめていた。
ハインツが私の姿に気付いて荷物を投げ出してこっちに来る。
「リンちゃああああ」
「うるさいわよ」
「ごめん。もうここを出るんだね…あの家に、もう戻れるんだね…っ」
薄らと、涙ぐんでいるハインツ。彼にも、あの屋敷に、あの家に思い出があるんでしょうね。
レイヴィスまで、嬉しそうに頬が緩んでいる。
そうよ、みんな……大好きだもの。
あの家が、パッヘルベル家が。
「…えぇ、帰りましょう。私達の家に…パッヘルベル家に…」
「…俺は、いつまでもお嬢をお守りします。何があっても、この命にかけて貴方を守ろう」
「リンちゃんの為に、みんなのために美味しいご飯を作ることを約束します」
荷物を持ち、ビルグレイツ家を出る。うちよりも、ほんの少し豪華な門。なんだか心が寂しい。
門まで見送りに来てくれたぴくとさん。
「もう行っちゃうのか〜…」
「ぴくとさん、本当にありがとうございました。このお礼は、次の機会に」
「お礼なんて別にいいよ!…リンちゃんの家に招待してくれればね?」
えぇ、と頷く。落ち着いたらぴくとさんを呼ぼう。ロボロさんやぺいんとさん、ノエルやオスマンさんにゾムも呼んで、感謝のパーティでも開こうかしらね。
「…リンちゃん、頑張れ」
「はい」
ぴくとさんの言葉をしっかりと胸に受け止める。馬車が走り出し、体に振動が伝わってくる。
馬車では沢山話した。
私の嫌いな性格についてだったり、レイヴィスが飼っていた犬の話、ハインツが料理人になる前はりんごの皮も剥けない不器用な少年だったとか、くだらなく、楽しい話。
家族のことを、また知ることが出来るそんな大切な時間。まだ互いに知らない事は沢山ありそうね。
いつの間にか、目的地のパッヘルベル家の新屋敷に着く。高鳴る胸を抑え、馬車を下り屋敷を目指した。
前と変わらない、私達が帰るべき家だった。
中に入ると、気づく。全く同じな訳では無いと。
生前、お父様が使っていた部屋の場所には、私の部屋ができていた。
「…レイヴィス、ハインツ」
「「はっ」」
「…パッヘルベル家は生まれ変わるわ。
これからも、私の事を、パッヘルベル家を支えてちょうだいね」
「お嬢の為なら」
レイヴィスがもちろんだと笑い、
「もちろんだよ」
ハインツは幸せそうに笑う。
今、生まれ変わる。
見ていてね…お父様、お母様。
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クロスてゃん - ありがとうございますぅぅぅ!アルネの事件簿と気づいてガチ泣きしました…本当に嬉しいです更新頑張ってくださいね! (2021年11月23日 23時) (レス) id: c934f9389d (このIDを非表示/違反報告)
??? - この小説なんなん? まじ泣きしてしまうわ (2021年10月3日 20時) (レス) @page27 id: 2651f7c57d (このIDを非表示/違反報告)
暁郗 - この使用人たちの名前。主人公の名前。家が大火事。………おっとぉ??? (2020年9月6日 23時) (レス) id: 14cb33816d (このIDを非表示/違反報告)
暁郗 - もし違ったら失礼なのですが。この小説の使用人たちの名前って、某超絶イケメンの最凶の吸血鬼エビリィ!ブラッティ!ノインテーター!!のお方とあの触覚が愛らしい吸血鬼マニアちゃんとその他いっぱいの人気推理ゲームじゃないすかぁ!何ですかこれ、素敵です!! (2020年9月6日 23時) (レス) id: 14cb33816d (このIDを非表示/違反報告)
理那(プロフ) - そうだ、名前変換で気付かなかったんだ。この主役、"リン"ちゃんだ。 (2020年8月2日 18時) (レス) id: db0db57d74 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:彼岸桜+α | 作者ホームページ:http://uranai
作成日時:2020年4月2日 10時