19話 生かされた命 ページ29
リンside
規則的に聞こえてくる微かな機械音に意識がふわっと戻った。
ゆっくりと目を開けば見たことの無い場所。ああ、そっか……
私、生きてるんだ。身体を動かそうとしても痛みで動かせない。自身の口に呼吸器がつけられているのを確認する。
……悲しくても、涙は出てきそうにないわね…
部屋のドアが開く音が聞こえてきた。
「…っリンちゃん……!!」
「…しん、ぺ……せんせ…」
駆け寄ってきて私の手を優しく握ってくれる。その手は震えていた。
「…ここ、」
「ここは国央病院。運ばれて来たんだ…3日間、眠り続けてたんだよ」
そっか、私3日間も。
「…良かった……痛いところとかある?」
「…全身が……左胸のところが…なんか……」
「疲労と筋肉痛、外傷が酷い………左胸?」
頷くと、体起こせる?と言われたのでゆっくりと身体を起こす。
「ごめん、失礼するね」
そう言ってしんぺい神先生が私の服のボタンを上から外していく。胸元をはだけさせ、私を鏡に映す。
「…酷い、痣だ」
鏡で見せてもらう。私の左胸には黒ずんだ痣があった。……心当たりがある。
「…ねぇ、せんせ……私の胸元に割れたものがなかった?」
考えた後、ハッとしたようにこれ?と見せてきたのは間違いなくゾムから貰ったキーホルダー。
形も分からないほど、割れてしまっていたが。
「…この痣は、守られた証よ……」
割れたキーホルダーを、手で優しく包み抱える。
服を直してもらい、しばらくしんぺい神先生と話していた。すると、ドアからノックの音が聞こえて来た。
入ってきたのは松葉杖で体を支えているレイヴィスと1着のドレスを持ったハインツの姿。
「お嬢…っ、ご無事で……」
「…本当に、良かった……」
「…こっちの言葉よ……良かった…本当に、本当」
俺は席を外すね、としんぺい神先生が気を利かせてくれた。
「…リンちゃん、これを君に」
ハインツが私にドレスを渡して来る。お母様が管理していたドレスのひとつ。
「これ…」
「…奥様に頼まれたんだよ。……このドレスを必ずリンちゃんに渡してくれって」
「お母様が……」
グレーをベースにしたプリンセスラインのドレス。お母様と私と同じような黄金で綺麗に飾られている。
「…ありがとう、ハインツ……」
ドレスを抱きしめた。
「…お嬢……」
心配そうなレイヴィスを見て、笑いかける。上手く笑えていないとは思うけど、こんな時だからこそ笑わなければいけない。
「…大丈夫よ。
まだパッヘルベル家は死んでないわ」
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クロスてゃん - ありがとうございますぅぅぅ!アルネの事件簿と気づいてガチ泣きしました…本当に嬉しいです更新頑張ってくださいね! (2021年11月23日 23時) (レス) id: c934f9389d (このIDを非表示/違反報告)
??? - この小説なんなん? まじ泣きしてしまうわ (2021年10月3日 20時) (レス) @page27 id: 2651f7c57d (このIDを非表示/違反報告)
暁郗 - この使用人たちの名前。主人公の名前。家が大火事。………おっとぉ??? (2020年9月6日 23時) (レス) id: 14cb33816d (このIDを非表示/違反報告)
暁郗 - もし違ったら失礼なのですが。この小説の使用人たちの名前って、某超絶イケメンの最凶の吸血鬼エビリィ!ブラッティ!ノインテーター!!のお方とあの触覚が愛らしい吸血鬼マニアちゃんとその他いっぱいの人気推理ゲームじゃないすかぁ!何ですかこれ、素敵です!! (2020年9月6日 23時) (レス) id: 14cb33816d (このIDを非表示/違反報告)
理那(プロフ) - そうだ、名前変換で気付かなかったんだ。この主役、"リン"ちゃんだ。 (2020年8月2日 18時) (レス) id: db0db57d74 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:彼岸桜+α | 作者ホームページ:http://uranai
作成日時:2020年4月2日 10時