☆ ページ27
「…っはぁ……っああ゛っ…!」
人を斬ることを、こんなにも躊躇しない自分が怖くなった。全ては生きるため、生き抜くために。
皆の……死を、無駄にしないため。
「…お嬢っ!」
いつの間にか背中に回られていたようで、レイヴィスの叫びに体を伏せる。
上で通過するナイフを目視し、背中に回ってきた奴の足を小型ナイフで刺す。動揺している隙に体を刻む。
返り血が妙に暖かくて、気持ちが悪い。
残り、少し…
そう思い足に力を入れて踏み出したその時、目の前に倒れかける。疲労だ、私とて人間。動き続けられるわけがないのよ。
何とか踏みとどまったが、心臓目掛けて飛んでくるナイフを躱す余力は無い。レイヴィスの悲痛な声を聞きながら、諦めかけた。
「…っ!」
胸に重い衝撃、何故かナイフが弾かれ私の胸の所で何かが割れる音がした。再びナイフを構えた相手を斬った。
他の奴らはレイヴィスが殲滅してくれたようで、私達は再び外へと向かう。
火の手がすぐそこまで近づいていて、外への道が徐々に閉ざされて行く。
「…っ時間の問題ね……」
「…庭への出口に行きましょう……食堂だ…!」
私達は食堂へと急いだ。何度も崩れてくる瓦礫に潰されそうになり、死を覚悟した。
途中、戦う使用人たちの姿が何度も見えた。
体験を振るう、お母様の姿も。…斬られる瞬間も。
食堂へ着き、外への扉を開けた。そんな簡単には、逃がさないと言わんばかりに、扉の所を囲まれていた。
さっきに比べたら、余裕。
レイヴィスと共に敵を斬り倒していく。私達は、逃げなければいけない。この家はもう残らないから…
正面玄関から外に出る。情けない事に、玄関から出た瞬間足が震えて、その場から動けなくなってしまった。
「お嬢っ!?」
レイヴィスが私を抱えて走り出そうとしたその時、後方から爆発音のようなものと同時にがしゃがしゃと心を抉るような、聞きたくなかった音がした。
「……っ…うそ、だろ…っく、そ………っ」
私を抱えたまま、レイヴィスがその場にへたり込む。声を殺し、涙を流すレイヴィスの頭を抱える。
家が燃える音と、声を押し殺す声だけが響く。
野次馬に囲まれながら、私達は意識を手放していった。
パッヘルベル家襲撃事件。その時間は僅か20分。
重傷者、2名。
軽傷者、1名。
死者、現当主と夫人を含む17名。
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クロスてゃん - ありがとうございますぅぅぅ!アルネの事件簿と気づいてガチ泣きしました…本当に嬉しいです更新頑張ってくださいね! (2021年11月23日 23時) (レス) id: c934f9389d (このIDを非表示/違反報告)
??? - この小説なんなん? まじ泣きしてしまうわ (2021年10月3日 20時) (レス) @page27 id: 2651f7c57d (このIDを非表示/違反報告)
暁郗 - この使用人たちの名前。主人公の名前。家が大火事。………おっとぉ??? (2020年9月6日 23時) (レス) id: 14cb33816d (このIDを非表示/違反報告)
暁郗 - もし違ったら失礼なのですが。この小説の使用人たちの名前って、某超絶イケメンの最凶の吸血鬼エビリィ!ブラッティ!ノインテーター!!のお方とあの触覚が愛らしい吸血鬼マニアちゃんとその他いっぱいの人気推理ゲームじゃないすかぁ!何ですかこれ、素敵です!! (2020年9月6日 23時) (レス) id: 14cb33816d (このIDを非表示/違反報告)
理那(プロフ) - そうだ、名前変換で気付かなかったんだ。この主役、"リン"ちゃんだ。 (2020年8月2日 18時) (レス) id: db0db57d74 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:彼岸桜+α | 作者ホームページ:http://uranai
作成日時:2020年4月2日 10時