45話 真の聖女 ページ3
「…偽物って……兄さんがその、本物の聖女記を所持してたって事なん?」
「…そういう事です。そこに記されていたことは__」
『湖に黄金の瞳持つ女現れし時、その国を正解へと導き、共に国を創る聖女になる。
湖に薔薇色の瞳持つ女現れし時、その国を破滅へと導くだろう』
本に記されていた通りのことを説明すると、一瞬目を見開いた先輩が私のフードを思いっきり外した。
視界がクリアになり、先輩の翡翠色の瞳が私を貫いていた。
先輩も気付いたのかな。
「…それと、破滅の聖女が現れた時に……
異世界から預言者が現れるようです、そういう事だな、チーノ」
メガネの奥に潜ませていた橙色の宝石が、ギラりと光る。
「…さすがA先輩。
あなたの言うとおり、俺が預言者です」
チーノが私の目の前に跪き、胸に手を当てていった。
「俺はあなたと同じ転生者ではございませんが、異世界から来たことは同じです。俺が預言者である事はグルッペンさんも知っています。
俺の役目は偽物の聖女に変わる、真の聖女様を見つけ出すこと、その役目もたった今果たすことが出来たようです……
…貴方が聖女様ですね、A先輩」
無意識に手が震える。こんな展開誰が望んだんだろう……
神のイタズラ?そんな甘いものでもない気がする。もしこの世界を操っている傀儡師が居るのだとしたら1発顔を殴らせて欲しい。
だって思わないじゃない。
自分がこの国を救う本物の聖女だったなんて。
笑えない、こんなの。
「…私は、私がもし本物の聖女だったとしても…大人しくしているような、何もしないでも愛されるような聖女になりたくない」
しんとした部屋の中、先輩が動いて服が擦れる音だけが耳に残る。私な近付き、いつもの変わらない笑顔で私の頬を掴んだ。
「いだだだ…っ……ちょ、へんぱい…!」
「なぁにしけたツラしてんねん!もっと誇りに思ってもええと思うで?俺は。
それに根本的なところからAとレティは違う。努力を重ねてきた奴に勝てるほど人間っちゅーんは上手く出来とらんからな」
「………あいがとうございらす」
先輩らしい言葉に少しだけ楽な気持ちになる。
黙って私たちを見ていたチーノが口を開き、少し吹っ切れたような表情で言った。
「…俺の事を、話してもいいですか…?」
俺の事を受け止めてくれますか。
頷けば、
力なく笑ったチーノがすっと息を吸った。
2097人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「wrwrd」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ポンコツ - めっちゃ面白くてどんどん読めました!マジ神作! (2021年5月15日 8時) (レス) id: 325f452e67 (このIDを非表示/違反報告)
隻狼姫(プロフ) - えっ、おすすめに出てきたから見てみたら面白くて一気読みしてたんですけど、まさかお気に入り登録してるtwst小説の作者さんだったとは…そりゃ面白いわけですわ… (2020年10月7日 21時) (レス) id: efc986c11a (このIDを非表示/違反報告)
暁郗 - 次回が最終回…だと…!?うああああ……待ちきれないぃぃい…。むっちゃ楽しみです!! (2020年9月26日 0時) (レス) id: 14cb33816d (このIDを非表示/違反報告)
kiito - あぁー最終章に突入してしまった〜!嬉しいけど寂しい(´;ω;`) (2020年9月21日 22時) (レス) id: 840ffe907d (このIDを非表示/違反報告)
ぽんちゃ(プロフ) - レティまさか、、、味噌汁に*を、、!?だから夢主は*に関する本を教授のいる図書室から借りてキッチンで*を作ってから飲んで耐性を付けたんですか!!?(*←のところ合ってるか分かんない、、) (2020年9月16日 20時) (レス) id: c3d604437a (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:彼岸桜+α | 作者ホームページ:http://uranai
作成日時:2020年6月6日 9時