51話 黒髪の女性 ページ9
何も無い。
黒でも白でもない…形容しがたい場所だった。唯一見えるものは自分だけ。
…死んだ、わけないな……
ここはどこだ。私は…頭痛で意識失って……
クソ、曖昧だな……
「…せ、んぱい……?」
「…チーノ、か?」
声のする方へ手を伸ばす。姿は目に移すことは出来ないが、何かに触れる。
「これ、チーノか?」
「じゃあ、これはA先輩の手ですね…俺の姿見えてますか…?」
「いや、何も無い…手を繋いでいる感覚しか…」
互いの手らしきものを握り、辺りを見回すが何度見ても無。
「…気味が悪い……」
「気味が悪いだなんて、失礼な子ねぇ」
突然、頭に響いた声に思わず握った手に力を入れる。チーノも同じように手を握るから聞こえているのは私だけじゃないはず。
「…誰」
「あら、もうとっくに分かっていると思っていたわ…」
黒い髪の女性が姿を現した。何でだ、どこかで見たことがある気が…
「どうして私たちをここに連れてきたの…」
「あなた達二人はこの国の現状全てを知る義務があるのよ。偽の聖女の事も話させてもらうわ。……時間が無いの」
真剣な目に何も言えず、黙って話を聞くことしか出来ない。
女性が口を開いた。
「結論から言わせてもらうけど、このまま進めば確実にこの国は滅ぶわ。偽の聖女は私欲の為だけに動くわ、これから先ずっと。死ぬまでね。
なら殺してしまえばいい…でも、そんな簡単にも行かない。偽の聖女が殺されたら国は混乱に陥るわ。
…徐々に、貴方が本物だと周りに理解させるしか方法はないの。
…でもね、国を壊そうとしている原因はそれだけじゃない」
分かるわね、と言わんばかりの瞳に見つめられ思い当たる名前を口にした。
「ロン・ディスペア」
「優秀な聖女ね。分かってるなら話は早いわ。その男がa国のスパイよ。
彼の狙いはレティという聖女を殺して国を混乱に陥れる事。止めるかどうか、どうするのかはあなた達にかかってるわ…
あなた達が起きた時に、彼も同時に動き出す。目覚めたら直ぐに彼を殺すべきだと、私は思うわ」
どうしてこの人は、こんなにも私達を助けてくれるのか……何故、知っているんだ……
私が、本物だってことも……
「…先輩、俺たちでやるしかないんじゃ……」
「…そうだな、この話を知っているのは私達だけだ……国が滅ぶことだけは何がなんでも食い止める」
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ポンコツ - めっちゃ面白くてどんどん読めました!マジ神作! (2021年5月15日 8時) (レス) id: 325f452e67 (このIDを非表示/違反報告)
隻狼姫(プロフ) - えっ、おすすめに出てきたから見てみたら面白くて一気読みしてたんですけど、まさかお気に入り登録してるtwst小説の作者さんだったとは…そりゃ面白いわけですわ… (2020年10月7日 21時) (レス) id: efc986c11a (このIDを非表示/違反報告)
暁郗 - 次回が最終回…だと…!?うああああ……待ちきれないぃぃい…。むっちゃ楽しみです!! (2020年9月26日 0時) (レス) id: 14cb33816d (このIDを非表示/違反報告)
kiito - あぁー最終章に突入してしまった〜!嬉しいけど寂しい(´;ω;`) (2020年9月21日 22時) (レス) id: 840ffe907d (このIDを非表示/違反報告)
ぽんちゃ(プロフ) - レティまさか、、、味噌汁に*を、、!?だから夢主は*に関する本を教授のいる図書室から借りてキッチンで*を作ってから飲んで耐性を付けたんですか!!?(*←のところ合ってるか分かんない、、) (2020年9月16日 20時) (レス) id: c3d604437a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:彼岸桜+α | 作者ホームページ:http://uranai
作成日時:2020年6月6日 9時