65話 ただいま、この世界 ページ24
次に目を開ければ、心配そうなみんなの表情が見えた。私の名を呼び、目が合えば泣きそうな顔で笑っているゾム先輩…
あぁ、帰ってきた。
…心配、してくれてる…
私が居なくなったら、悲しんでくれる……
…戦争が絶えない国のはずなのに、どうしてこんなに安心するんだろう……
「…起きるのがおっそいねん……おかえり、A」
「…ただ今戻りました、ゾム先輩」
優しく笑った先輩は、力の入らない私の体を強く抱きしめる…痛い…けど、この痛さがどうしようもなく心地よい。
「…ほんま馬鹿やな、お前は。…Aは俺の相棒やろ、相棒1人残して倒れとんちゃうぞ」
私の耳のピアスを撫でて、少し拗ねたような先輩の反応を見て、私が認められている事を確信する。
…てか、幹部全員いるじゃん……
「…グルッペン様、ご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした」
「謝る必要はないゾ…A、よく戻った」
ふと、隣を見ればまだすやすやと眠っているチーノの姿。…これも、預言者の能力なのかな。
だったとしても、無理をさせてしまった。ごめんな、チーノ…ありがとう。
「…アンタが預言者で、良かった」
力の入らない手になんとか力を込めて、ふわふわとした頭を撫でてやれば、少し表情が和らいだ気がした。
「…A」
しんとした部屋の中、鬱隊長に名を呼ばれた。振り返ってみてみれば、泣きそうな顔をした鬱隊長が深く私な向かって頭を下げていた。
「ほんまっ、すまんかった!!あん時に、俺がAの事撃っとらんかったら…こないな事にはならんかったかもしれへん」
…確かに、撃たれた時は正直、ムカついた。でも皆の立場を考えればレティの言葉を信じる他に道はない。
「…頭をあげてください…鬱隊長や皆さんがレティさんの言葉を信じるのは当たり前のことでしょう?…その行動に間違いはなかった……
一つ間違えていることがあるとしたら、最初からあなた達は信じる人を間違えている」
もう今更、隠す必要も無い。
勘のいい人達なら、もうこの言葉の真意に気付いているかもしれない。
「A、明後日、教会にて聖女任命式が行われる……その時だ」
「…分かりました」
それまでに、完全復帰しないといけないらしい。
やはりグルッペン様は鬼畜だ。
まぁ、そこも兼ね揃えてのカリスマ性なんだろうけど。
2096人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「wrwrd」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ポンコツ - めっちゃ面白くてどんどん読めました!マジ神作! (2021年5月15日 8時) (レス) id: 325f452e67 (このIDを非表示/違反報告)
隻狼姫(プロフ) - えっ、おすすめに出てきたから見てみたら面白くて一気読みしてたんですけど、まさかお気に入り登録してるtwst小説の作者さんだったとは…そりゃ面白いわけですわ… (2020年10月7日 21時) (レス) id: efc986c11a (このIDを非表示/違反報告)
暁郗 - 次回が最終回…だと…!?うああああ……待ちきれないぃぃい…。むっちゃ楽しみです!! (2020年9月26日 0時) (レス) id: 14cb33816d (このIDを非表示/違反報告)
kiito - あぁー最終章に突入してしまった〜!嬉しいけど寂しい(´;ω;`) (2020年9月21日 22時) (レス) id: 840ffe907d (このIDを非表示/違反報告)
ぽんちゃ(プロフ) - レティまさか、、、味噌汁に*を、、!?だから夢主は*に関する本を教授のいる図書室から借りてキッチンで*を作ってから飲んで耐性を付けたんですか!!?(*←のところ合ってるか分かんない、、) (2020年9月16日 20時) (レス) id: c3d604437a (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:彼岸桜+α | 作者ホームページ:http://uranai
作成日時:2020年6月6日 9時