43話 兄さんに ページ1
馬車に揺られる感覚にふと目が覚める。
……そうだ、今移動中なんだよな。深くにも寝てしまっていた自分が少し恥ずかしい。
窓の外にはいつもの城下の風景とは全く違う街並みが見える…もう隣国か。
…城下町よりも笑っている人が沢山いる。少しだけ悔しいと思う。
目的地に着いて、馬車を降りる。目の前には1軒の質素な家。
扉をノックすると少しだけ懐かしい声が返事をした。少し高鳴る胸を抑えて声の主が扉を開けるのを待つ。
「どちら様で……って…A…!?」
昔と変わらずに、首にストールを巻いてくわえタバコをしながら出てきて…安心した。
「久しぶり、兄さん」
「…大きくなったんやなぁ……一瞬誰か分からなかったわ」
家の中に入れてもらう。余計なものは置いておらずやっぱり私は兄さんに似たのかもしれないと思った。
「コーヒーでええか?」
「ありがとう」
椅子に座り、淹れてもらったコーヒーを啜る。城のものとはまた違う上品な味。
「最近の調子はどうですか?」
「大したことは何もないよ、いつも通り怪しげな感じがしたら視察するってだけやし……まぁ、来月には1度城に戻るつもり」
なんだか少し怖かった。レティと唯一対面していない兄さんが…
いや、ないな。兄さんに限ってそれは無い。
「…で、どうしたんだ?Aがわざわざ俺のところに来るなんて珍しい……なんかあったん?」
「……兄さんは、聖女についてどのくらい知っていますか?」
聖女という単語に、目を見張っている兄さん。口に含んでいたコーヒーを飲み込んで私に言う。
「…聖女が、現れたんか?」
「…うん」
ずっと椅子から立ち上がり私に着いてくるように言う。兄さんの後を付いていくと書斎のような部屋。
外見から見る限りはこんな部屋があるなんて思ってなかった。
1冊の分厚い本を持ってきた兄さんが机に本を置いた。
「これは?」
「…城にある聖女記は……簡単に言うと偽物なんだ」
「…え?」
本を開いて私に一文を読ませる。
『湖に黄金の瞳持つ女現れし時、その国を正解へと導き、共に国を創る聖女になる。
湖に薔薇色の瞳持つ女現れし時、その国を破滅へと導くだろう』
「…聖女の条件が……違う…?」
「そう。前国王様に頼まれたんだよ。城に置いておいたら混乱を招いてしまうから俺に管理を頼んだんだと思う」
…薔薇色……
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ポンコツ - めっちゃ面白くてどんどん読めました!マジ神作! (2021年5月15日 8時) (レス) id: 325f452e67 (このIDを非表示/違反報告)
隻狼姫(プロフ) - えっ、おすすめに出てきたから見てみたら面白くて一気読みしてたんですけど、まさかお気に入り登録してるtwst小説の作者さんだったとは…そりゃ面白いわけですわ… (2020年10月7日 21時) (レス) id: efc986c11a (このIDを非表示/違反報告)
暁郗 - 次回が最終回…だと…!?うああああ……待ちきれないぃぃい…。むっちゃ楽しみです!! (2020年9月26日 0時) (レス) id: 14cb33816d (このIDを非表示/違反報告)
kiito - あぁー最終章に突入してしまった〜!嬉しいけど寂しい(´;ω;`) (2020年9月21日 22時) (レス) id: 840ffe907d (このIDを非表示/違反報告)
ぽんちゃ(プロフ) - レティまさか、、、味噌汁に*を、、!?だから夢主は*に関する本を教授のいる図書室から借りてキッチンで*を作ってから飲んで耐性を付けたんですか!!?(*←のところ合ってるか分かんない、、) (2020年9月16日 20時) (レス) id: c3d604437a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:彼岸桜+α | 作者ホームページ:http://uranai
作成日時:2020年6月6日 9時