独白【散文】 (ページ1)

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無知 ※会話文のみページ1

｢人は、知る事で多くのものを失う｣

｢逆じゃないの？知る事で得るものは多いし……｣
｢逆じゃない。知る事で、失うんだよ｣
｢例えば？｣
｢酒、煙草、ドラッグ。一度でも味を知れば、知らなかった頃には戻れない｣
｢……勉強も知る事だよ？｣
｢勉強をして何かを得れば、無知な頃の冒険心や無邪気さは失われる。馬鹿げたことだ……って｣
｢そりゃあ、出来ない事をして恥をかくのは嫌だし……｣
｢失ってるんだよ。出来ることと出来ないことを知る事で｣
｢ふーん……｣

｢とある名言であったの。幸福の秘訣は無知であることって｣
｢つまり？｣
｢どうして人って、知る事による苦しみの方を選ぶんだろうね。人は、無知であるべきなんじゃないかな？｣
｢そうなの？｣
｢うん。だって、アダムとイヴは知恵の実を食べて知恵をつけたでしょ？だから天国から堕とされた。知る事は、本当にいいことなのかな？｣

｢……無知の幸福、か……なら、君はきっと、不幸だったのかな。君は、いつも何かを考えていて、とても知識が豊富だったから。今、僕は君の気持ちが知りたいよ。君の最期が知りたいよ。その為なら、僕はどんなに不幸になったって構わないから｣