結婚生活4 ページ4
.
今は認められたいと思ってはいない。
絶対に見返してやる、そんな意地だけでやってきた。
だけど、完璧じゃない俺は、完璧になりきれない。
惨めに玄関に倒れ込んでいる。弱音まで吐いて。いっそ笑えてくる。
「ハハ.....」
『...大丈夫？頭打って頭おかしくなったんですか？』
ひんやりと冷たいものが額に触れる。
「鈴木.....」
「はい、なんですか？」
俺の額に手を当てながら首を傾げる。
少し濡れた髪からシャンプーの匂いがふわっと香る。
同じシャンプーを使っているはずなのに甘く感じる。ズキズキと傷んでいた頭痛が少し和らぐ。
そうやった、家にはコイツが居たんだった。
情けない姿を見られた。
少しずつ頭が冷めていき、触れられている手に不快感を覚え始める。
「...触んな。干渉せぇへん約束やろ。」
目を合わせずにペシっと鈴木の手を払い除ける。
冷たい声に冷たい言葉を浴びせる。
俺は女が嫌いだ。
繁殖前のネコのように擦り寄ってくる。気持ちが悪い。父親が政略結婚の話を持ってきたことがあるが、相手の女もそういうやつだった。一緒に住むと考えるだけで吐き気がした。その分鈴木はお金さえ渡せば約束を守る女で都合が良かったから結婚した。
それでも、他の女と比べてマシってだけで、好きではない。そんなやつに触れられれば不快になるのも当然だ。
『.......』
俺は顔を合わせないように下を向いているから、鈴木が今どんな顔をしているのか分からないが、鈴木は無言で立ち上がる。
『＿あんたは子供か！！』
「.....は？」
鈴木はﾊﾞﾁｰﾝｯと俺の頬を両手で挟み、顔を上に向かせる。怒ったような顔をした鈴木と目が合う。一緒に暮らし始めて半月ほど経ったが、鈴木のこんな大声を聞いたのは初めてだ。
思わず目をぱちくりとさせる。
『...靴脱いで。立てないなら支えるんで、リビングに移動しましょう。』
「お、おぅ...」
なんとも言えない圧力に負けて、素直に靴を脱ぎ、支えてもらいながらリビングのソファに座る。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 3115人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
黒狐 - 気づいたら終わってた。あれ相棒いるやんwwwめっちゃ面白いです!頑張って下さい！ (2023年4月25日 15時) (
レス) @page29 id: fb020f6fb3 (このIDを非表示/違反報告)
光 - 終わり!?でも、面白かったです (2023年4月9日 19時) (レス) @page29 id: 6a74bcc34d (このIDを非表示/違反報告)
ルジア(プロフ) - 初コメ失礼します！！文才すごすぎませんか!?すごく面白い作品ですぐに読み切ってしまいました…続き楽しみにしてます！ (2023年3月30日 6時) (レス) id: 3a74c6bd31 (このIDを非表示/違反報告)
牛乳雑巾 - コメント失礼します。emさんの登場ありがとうございます(？)めっちゃ嬉しいです。これからも頑張ってください！ (2022年9月7日 15時) (レス) @page12 id: c198431d55 (このIDを非表示/違反報告)
白猫 - とても面白くて一瞬で読み切ってしまいました。更新、お待ちしております。 (2022年8月30日 10時) (レス) id: c36a6b3b63 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：あほの田中 | 作成日時：2020年11月29日 1時
