3-1【そよ様との出会いアレンジ】 ページ8
『そよ様、ここがかぶき町です。そよ様には考えもつかないような荒くれ者どもが住む街ですよ』
「まぁ……楽しみですね。さ、行きましょう」
うーん……胃が痛い……。
事の発端は今から数時間前に遡る。
『そよ様が家出？』
「あぁ。なんでも朝侍女が起こしに行った際にはもう行方不明だったそうだ。恐らく夜中から明け方に城を抜け出したんだろう」
要するにお上からそよ様を一刻も早く見つけて連れて帰れ、見つからなければ即切腹、という至極簡単な話が来たということだ。
早速手分けしてそよ様を探そうと1人でふらりと街を歩いていたところ、あっさりそよ様は見つかった。
城下に降りてきたばかりで隠れる術もよくわかっていないのだろう。
『そよ様……』
「…………」
『…………江戸の見回り、良ければ一緒にしますか？』
「え……は、はい！」
要するに私はそよ様の眼差しに負けたのだ。
こんなことがバレたら始末書どころでは済まないとはわかりつつも、そよ様ぐらいの年頃の、ましてや将軍の妹という立場では、城下に遊びに行くことなど一生の夢ぐらいの事だったのだろう。
今日1日だけとそよ様も言った。かぶき町は荒くれ者だらけの街だが、大人しくすれば荒くれ者も向かっては来ない。
それに、かぶき町には神楽ちゃんもいる。
『そよ様、歩いてばかりで疲れたでしょう。公園で休みませんか？』
「そうですね」
そよ様はブランコに腰をかけると、遠くに見える江戸城をぼうっと眺めながらぽつりと呟いた。
「すごい、お城があんなにも小さく見える。ずっとお城の中にいたから、とても新鮮な気分」
『……そうですね。私、普段はここにあまり来ませんから、ここからでも城が見えるなんて知りませんでした』
「そうなんですか？ここには貴方の友達がいると聞いてましたけど……」
『ここのところ仕事が立て込んでて、その友達とも会えてないんですよ。でももうすぐペットの散歩で来ると思うんですけど……』
ガブッ
頭から血が流れるのを感じる。上を見ると神楽ちゃんのペットが私の頭にかじりついていた。
「呼んだアルか？」
『ギャアアアアア！！！！』
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作者名：おさくら | 作成日時：2020年5月7日 0時
