第3話 ページ5
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唖然として口をぽかんと開けたまま、私は角名くんを見つめていた。
その間も彼は何も話さなくて、静かな空間でさっき言った角名くんの言葉が頭の中でリピートされる。
彼氏の特権を奪う?
角名くんが?
私の?
何度復唱しても訳が分からなくて、頭が追いつかない。
私の伝え方が悪かった?と自問自答している間に、角名くんは慣れた手つきで制服のポケットからスマホを取り出した。
「じゃあ、LINE聞いてもいい?」
「LINE……?」
LINEという言葉を今初めて聞きました、というテンションで聞き返してしまい、少し恥ずかしくなる。
そんな私の反応が面白かったのか、目の前の彼は少し笑いながら更に聞いてきた。
「もしかしてやってない? あ、でもクラスのグループ入ってたよね?」
「や、やってる! LINEやってるけど!」
私が角名くんを呼び出したはずなのに、なぜかペースは既にあちらのもので、こちらもテンパりながらスマホを取り出す。
「もしかして、連絡先とか聞かれるの嫌だった?」
「嫌じゃないけど、いきなり角名くんが そういうこと聞いてくるから、びっくりしちゃった……」
私は素直にそう言いながら、アプリを開いていく。
好きな人の連絡先が聞けて嬉しいはずなのに、今はそんな気持ちよりも″困惑″が勝ってしまっている。
「Aといつでも連絡取れるようにしたくてさ」
「か、かしこまりました……」
謎の敬語が出て、もう穴があったら入りたい。
私がQRコードの画面を差し出せば、角名くんはそれを読み込んだ。
そして、すぐに追加される彼の名前。
私のスマホに映る″角名倫太郎″という文字がとても新鮮で、それを指でなぞってみれば熱が伝わるようだった。
「Aありがとう。じゃあ明日からもよろしくね」
「ま、待ってよ!」
その場から離れていこうとする角名くんを引き止めたくて、名前を叫ぶ。
こっちはこんなにドキドキしているのに、彼はそんな気持ちを表情からは少しも読み取らせてくれなくて、悔しくなる。
「ほ、本当に彼氏の特権、奪いにくるの……?」
恐る恐る、声を絞り出すようにして聞いた。
角名くんは私のことが好きなの?という質問は聞けなかった。
それはきっと、角名くんから甘い言葉を言われる日々の心地良さを、私が完全に捨てきれないでいるからだろう。
「当たり前じゃん。だってAに好きも可愛いも言えないなんて、俺イヤだもん。覚悟してて」
そう言い放った彼の表情は、私が見た中で一番綺麗でかっこよかった。
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吉田はるさめ(プロフ) - 黒尾ファンさん» コメントありがとうございます! くろおくんですね! いつかまた書きたいと思っているので、気長にお待ちいただけたら嬉しいです☺️ (3月14日 13時) (レス) id: 545b1ba1c6 (このIDを非表示/違反報告)
黒尾ファン - 最高これからもいろんな作品を作ってください黒尾くんもできればよろしくお願いします (3月13日 18時) (レス) @page28 id: 13c9948002 (このIDを非表示/違反報告)
吉田はるさめ(プロフ) - 湯棚さん» コメントありがとうございまーす! 最後までお付き合いいただき、感謝感謝です✨ (12月30日 7時) (レス) id: 545b1ba1c6 (このIDを非表示/違反報告)
湯棚 - キュンキュンが止まらないっ!完結おめでとうございまーす!! (12月29日 21時) (レス) @page26 id: ec9d942a77 (このIDを非表示/違反報告)
吉田はるさめ(プロフ) - 天さん» 最後まで読んでいただき、ありがとうございました! 「キュン」を届けられていたのならこちらも嬉しいです☺️ (12月29日 10時) (レス) id: 545b1ba1c6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:吉田はるさめ | 作成日時:2023年12月18日 1時