第1話 ページ3
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「Aおはよう。今日の前髪の巻き方めっちゃ綺麗。可愛い」
「角名くんおはよ。今日も相変わらずだね」
朝練を終えた彼が、同じクラスの治くんと共に教室に戻ってくる。
今日も今日とて、私に甘い言葉をくれる角名くんが好きで好きで堪らない。
いつもならその言葉に笑ったりお礼を言ったりして流している私だったけれど、今日の私はいつもとは違う。
「あ、角名くんさ。今日は部活無いって言ってたじゃん? だから、放課後少し時間取れない? ちょっとで良いんだけど」
「別に今でもいいけど。どうしたの?」
「今じゃ話しづらいというか。ちょっと、大事な話」
「……ふーん」
こんな言葉、文字だけで見れば「愛の告白」をするようにしか見えない。
でも違う。
私は今日、角名くんに「もう可愛いとか好きとか言いながらからかってくるのは辞めて欲しい」とキッパリ伝えるのだ。
本当は今伝えてもいいけど、笑って有耶無耶にされたらそれこそ困る。
角名倫太郎という人物を好きになってから、短くは無い月日が経ってしまった。
好きとか可愛いとか言われて、そりゃ私だって最初は嬉しかったし、それを真に受けて浮かれていた。
でもいつからか、そんな気持ちも減っていって、マイナスな感情の割合が増えていって。
言語化するのは難しいけれど、なんというか「付き合う気もないのに、無責任に愛を囁かないで」というのが一番しっくりくる。
「Aからの告白だったら、俺、心の準備しておかないと」
そう言って、角名くんが柔らかく笑うから。
……あぁ、この笑顔を見守っていられるのがずっと私だったら、どんなに幸せだったか、なんて。
「んー、どうだろうね。期待はしない方がいいかもしれないけど」
「……へぇー。じゃあ、楽しみにしてるね」
「告白じゃない」ときっぱり言わなかったのは、私の最後の意地悪のつもりだった。
角名くんが私に対してどういう感情を抱いているのかは知らないけど、そんなに甘い時間にはならないよ、と予め伝えておくのは何となく違うなと思って。
今日の約束を取り付けると、彼は自席に向かっていった。
その無気力そうな猫背を見つめながら、とうとうこの日々が終わってしまうのか……という悲しみに打ちひしがれる。
終わらせたいのか終わらせたくないのか、どっちなのか自分でも分からないまま、一時間目の授業を確認して教科書を準備していた。
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吉田はるさめ(プロフ) - 黒尾ファンさん» コメントありがとうございます! くろおくんですね! いつかまた書きたいと思っているので、気長にお待ちいただけたら嬉しいです☺️ (3月14日 13時) (レス) id: 545b1ba1c6 (このIDを非表示/違反報告)
黒尾ファン - 最高これからもいろんな作品を作ってください黒尾くんもできればよろしくお願いします (3月13日 18時) (レス) @page28 id: 13c9948002 (このIDを非表示/違反報告)
吉田はるさめ(プロフ) - 湯棚さん» コメントありがとうございまーす! 最後までお付き合いいただき、感謝感謝です✨ (12月30日 7時) (レス) id: 545b1ba1c6 (このIDを非表示/違反報告)
湯棚 - キュンキュンが止まらないっ!完結おめでとうございまーす!! (12月29日 21時) (レス) @page26 id: ec9d942a77 (このIDを非表示/違反報告)
吉田はるさめ(プロフ) - 天さん» 最後まで読んでいただき、ありがとうございました! 「キュン」を届けられていたのならこちらも嬉しいです☺️ (12月29日 10時) (レス) id: 545b1ba1c6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:吉田はるさめ | 作成日時:2023年12月18日 1時