第13話 ページ15
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「り、んたろう、くん」
倫太郎くんの顔が近い。
私が吐いた息が、彼の唇にまで届いている気がする。
「あの、倫太郎くん」
一瞬も私から目を離さない倫太郎くん。
私もそんな彼から目を離せないでいた。
「A、可愛いね」
「え！？」
急にそう呟いた彼。
脈絡も無いその言葉に、私の顔には熱が集まり、ドキドキが止まらなかった。
「この距離で見ても可愛い。本当に可愛い。A大好き」
「ま、またからかって……！」
手首を掴まれたままで、取ろうとしても取れない距離がもどかしい。
それに抗うように、私はぷいっとそっぽを向いた。
「まぁ、安心してよ。……それも今が最後だからさ」
「……最後？」
「うん」
その言葉にびっくりして、私はもう一度倫太郎くんのことを見た。
最後ってどういうこと？という疑問で頭がいっぱいになり、口がはくはくと動く。
「Aに、可愛いって言うのも好きって言うのも、もう辞める」
そして、改めて本人からそう言われ、その衝撃で体がキャパオーバーになりそうだった。
頭をガツンと殴られたような、体に雷が落っこちたような、そんな衝撃。
その衝撃を受け止めて処理するのに精一杯の私の脳みそは、倫太郎くんに何かを聞き返す、なんて余力を持ち合わせていなかった。
「好きでもない男からそう言われてもA迷惑だったでしょ？」
「な、んで」
やっとのことで動いてくれた私の口。
でもその「なんで」という言葉は、何に対しての理由を聞いているのか私にも倫太郎くんにも分からなかった。
「今まで優しくしてくれてありがとう」
なんで。
優しくしてくれたのは、倫太郎くんの方なのに。
彼は私の手首をパッと離す。
離されたのは手首だけのはずなのに、その瞬間に他の大切なもの全部が倫太郎くんから手放されたような気がして、目の奥がツンとした。
「……呼び方も、もう角名でいいから」
彼への呼び方。
それは、あの日から何も変わらないと思っていた日常の中で、唯一変わったところでもあった。
「まぁ、これからもクラスメイトとしてよろしくね。んーと、」
何となく次に紡がれる言葉が聞きたくなくて、両手で耳を抑えようとする。
でも、そんな私の動きよりも早く、彼はその言葉を口にした。
「清宮さん？」
瞬きをすれば、涙がこぼれ落ちるところで何とか耐える。
倫太郎くんは私の席の椅子から立ち上がると、廊下の方へと姿を消した。
彼が今の今まで座っていた椅子を眺めながら、誰かが教室に入ってくる雰囲気を感じていた。
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吉田はるさめ(プロフ) - 黒尾ファンさん» コメントありがとうございます！ くろおくんですね！ いつかまた書きたいと思っているので、気長にお待ちいただけたら嬉しいです☺️ (3月14日 13時) (
レス) id: 545b1ba1c6 (このIDを非表示/違反報告)
黒尾ファン - 最高これからもいろんな作品を作ってください黒尾くんもできればよろしくお願いします (3月13日 18時) (レス) @page28 id: 13c9948002 (このIDを非表示/違反報告)
吉田はるさめ(プロフ) - 湯棚さん» コメントありがとうございまーす！ 最後までお付き合いいただき、感謝感謝です✨ (12月30日 7時) (レス) id: 545b1ba1c6 (このIDを非表示/違反報告)
湯棚 - キュンキュンが止まらないっ！完結おめでとうございまーす！！ (12月29日 21時) (レス) @page26 id: ec9d942a77 (このIDを非表示/違反報告)
吉田はるさめ(プロフ) - 天さん» 最後まで読んでいただき、ありがとうございました！ 「キュン」を届けられていたのならこちらも嬉しいです☺️ (12月29日 10時) (レス) id: 545b1ba1c6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：吉田はるさめ | 作成日時：2023年12月18日 1時
